マクガフィン

魂のゆくえのマクガフィンのレビュー・感想・評価

魂のゆくえ(2017年製作の映画)
3.2
人道支援をした教会が企業の寄付金に頼る、社会経済的要因を含む人道援助的に変わったこと。また、それらの変化と変わらない宗教と対比を背景にしたことが、リアルに。ネットの普及により、宗教の矛盾と欺瞞が簡単に調べられる牧師の苦悩や、牧師も困難に対峙した時に、聖書を読むよりPC検索していることが如何にも現代的に。教会や宗教の役割から見えてくる現代の問題や折り合いが興味深い。

牧師として、多くの人に神の言葉や教えを語りながら導くのに、助言を求められた一人の男さえも救えない葛藤。宗教的な報いや願いの見返りの在り方を説くのに、完全に捨てきれないようにも。信者に話していることが、写し鏡のように自分に突き刺さる矛盾が痛々しい。

スタンダードサイズの画面や、静謐に進んでいく展開は退屈なこともあるが、難しいテーマに真っ向から向き合うような制作陣の姿勢は好感だし、ポイント的にはハッとさせられることも。政治も企業も宗教を利用する背景は良かったのに、作品のテーマでもある、地球温暖化やイラク戦争での批判は、そのまんま共産党批判に繋がるので、どうなんだろう。この映画自体がスポンサーなどの様々な意向を汲んでいるような、作品同様な矛盾も散ら付くことに。

自傷行為からの解放は、夫と牧師の行動の経緯と結果の対比にも。何と言いつくして良いか分からない結末だが、牧師が聖人君子である必要性は無いと思っていたからか、カタルシスを感じたことは良かった。