てっぺい

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search/サーチ(2018年製作の映画)
4.5
【この映画の存在こそが事件】
映画が全てパソコン画面の映像で構成される圧倒的なオリジナリティ。それもかすむほど、失踪事件の真相を追う怒涛のどんでん返しと伏線回収の見事な脚本力。もはやこの映画の存在自体が事件!
◆概要
100%PC画面の映像で展開される異色の作品。出演は「スター・トレック」シリーズのジョン・チョウら。製作に「ウォンテッド」のティムール・ベクマンベトフ。監督はYouTube動画で注目を集め、本作が長編デビューとなるアニーシュ・チャガンティ。
◆ストーリー
デビッドは、突然姿を消した娘のPCにログインしてSNSへのアクセスを試みる。だがそこには、いつも明るくて活発だったはずの娘とは別人の姿が映し出されていた。
◆感想
自分の映画経験上稀に見る衝撃作。映像は全てパソコン画面の映像で構成され、テキストの打ち込みやそのディリート、さらにカーソルの動きで感情が表現される圧倒的なオリジナリティ。それだけならまだしも、ストーリーが次々とどんでん返しを重ねる怒涛のサスペンス。見ていて全く飽きないどころか、伏線回収の嵐の末に辿り着くラストは脚本の妙、圧巻そのもの。
まずは、映像のオリジナリティに注目したい。100%PC画面で構成されるという表現がどういう事なのかいまいちピンと来なかったけど、見てみるとなるほど、チャットやビデオ電話(FaceTime)、生配信中のニュース映像など、パソコンに表示されるそれぞれのアプリケーションに寄ったり引いたりでストーリーが進んで行くという表現手法。これで映画って作れるのかと、そのクリエイティブな発想に舌を巻くのと同時に、パソコン画面だけで人の感情が表現できる事にも驚かされる。チャットでの会話やFaceTimeでの直接的な映像による感情表現はもちろん、送信しようとしたテキストを間をおいてディリートする形もあれば、ファイルの削除を戸惑うカーソルの動きもある。そういえば自分自身もスマホやパソコンでよくやるこの微妙な心の動きが、特にこの映画の父娘間の感情表現に見事に適用されていたと思う。
またこの映画がサスペンスである事が、さらに映像表現を豊かにしている。失踪した娘を探す探偵とFaceTimeで会話しながら、別ブラウザで同時に娘のSNSを辿り、検索し、手がかりを見つけながら真相に近づいていく様は、映画でありながらどこか身近でとてもイマドキなネット社会を感じさせる。
さらに映像がほぼ父のPC画面のみである事で、父の目線・考え方に没入するので、サスペンスが1人の目線だけで展開され分かりやすく、さらにどんでん返しの驚きにも効果的に働いている。PC画面で構成されるという事が、ただのアイデアではなく、サスペンスの面白味を何倍にも増幅させている点が素晴らしい。
◆◆以下ネタバレ◆◆
単なる殺人事件で映画として終わるのかと思いきや、終わってみれば父の娘への愛こそが真相に辿り着く原動力となった、とても心温まるラスト。母の死に対する父娘の心のすれ違いが、見事に重なり成就し、終始サスペンス展開でドキドキだった事もあって、ほっこり度はマックス。映像表現の豊かさがかすむほど、この映画の脚本力が光っている事が分かる。
湖の車の引き上げや、娘の救出時までも映像配信される露骨なネット表現や、#FindMargotへの誹謗中傷や周りの人間たちの変化、さらにはネットでの擬人化など、ネットモラルに対する風刺もびっしり。でも最終的にはそれらをも逆手にとって成功に辿り着く、ネットへの肯定と否定を織り交ぜた点も素晴らしい。
イマドキで、アイデアに溢れていて、サスペンスでありながら、でも映画の原点である心の揺さぶりもしっかりあった文句なしの映画でした!
てっぺい

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