「サッカーの歴史において前例のない挑戦です。墜落事故からわずか2ヵ月でシーズン開幕戦です」
2016年、飛行機の墜落事故で71名の選手とスタッフを失ったシャペコエンセが、セリエAの舞台で再生するまでを扱ったドキュメンタリー。
とにかく開始10分が泣ける。こんな悲劇が実際に起きていたことが悲しすぎる。人口20万人しかいない小さな街のクラブがやっとの思いで南米大会の決勝まで上がり、これから初の栄冠へ挑戦するというところで起きた悪夢。選手・監督を含む71人が死亡し、生き残った選手は3人だけ。事故から生存した選手や、夫を亡くした妻達へのインタビューがキツかった。
その後たった2ヵ月でチームを作り直さなければならないという事態に遭遇した経営陣だったが、再建に関しても最初から一枚岩になれていたわけではなかった。昔のチームのやり方を好むもの、墜落事故から数ヶ月しか経っていないのに結果を求めるサポーター、監督への不信感、クラブに利用されていると感じている生存者、多額の補償を求める妻達とクラブのいざこざなど、課題は山積み。事態は好転していくが、各課題に明確に解決が起きないのがドキュメンタリーだなという感じだった。
以下、セリフメモ。
「コパ・スダメリカーナで優勝して帰る。たった20万人の街に国際タイトルを持ち帰るんだ」
「小さな街のクラブチームだからこそ、ブラジルを代表することが誇りだよ」
「朝2時40分だった。イヤな予感がしたの。アランから電話がないのはおかしいと思って」
「朝3時半に友達から連絡があった。何があったのか聞いたら、"飛行機がレーダーから消えた"って」
「テレビで事故のニュースを見たの。それで71名が死亡したと知った」
「右足を失いもうサッカーができないと知った時は、ものすごく怖くなって涙が止まらなかったよ」
「(墜落翌日のことは)はっきりと覚えてる。街が水中に沈んだようだった」
「小さな街だから、みんながどこかで選手と繋がってる。自分の家族が死んだのと同じなんだ」
「彼のプレーした場所を歩いた。彼がゴールを祝った場所。でも彼は死んでしまった」
「ファンたちは心配した。"クラブは無くなるのか?"と」
「復帰の可能性を神様が残したなら、やらなきゃダメよ」
「事故から数ヶ月しか経ってないのにこんなに批判されるとは…」
「もう誰も聞きたくないはずだ。"前のシャペは…"なんて」
「"前のチームのために勝て"なんてマンシーニは言わなかった。"ただ勝て"とだけ。そうして変化が生まれ始めた」
「絶対に復帰してみせると決めた。それが死んだ仲間への弔いだ」
「レコパで勝てれば最高だ。トロフィーを彼らに捧げられる」
「勤務中に死んだのよ。労働災害として扱われるべき。残念だけど裁判を起こす必要がある」
≪死亡した選手の未亡人らがクラブを訴えました。通常選手の収入の大部分を占める、肖像権料の未払いについての訴訟です。≫
「神のおかげで生還したのにクラブは給料を払うだけ。カウンセラーの手配もしてくれない」
「メデジンから戻り、マンシーニを解任することにした。変化が必要だと感じたからだ」
「クラブの再スタートを助けたのは、チームが家族だという感覚よ」
「アランが試合に復帰するまであと一歩だ。スタンドから見たら大泣きしてしまうと思う」