にゃんこむ

スローイング・ダウン ファストファッションのにゃんこむのレビュー・感想・評価

3.9
昨今のファストファッションについて警鐘を鳴らす作品。
「フード・インク」は食品の画一的大量生産における弊害を描いた映画でしたが、それの衣料品バージョンです。
ナビゲーターはミュージシャンでありながら酪農家でもあり、環境保護活動に熱心な『Blur』のベース、アレックス・ジェームス。

一時間強にまとめられたコンパクトなドキュメンタリーですが、内容がとても濃いし、字幕も早いので目を離す隙が無い密度の高い作品でした。

そもそもファストファッションとは、90年代のハイストリートショップ(流行の商品を低価格で大量生産するスタイルで、都市の中心部の大通りに大型店を出す、H&M、トップショップ、プリマーク、ザラなどのお店のことを言うらしいです)がファッションショーをまねて流行を安く早く提供しすること。

ハンバーガーと同じ値段のシャツは本当に「お買い得?」なのか。
一生長持ちするはずだった服が、1シーズンだけの服に取って変わられていく中、安くて早い衣料品は倫理観を崩していないのか。
ファッション業界のグローバル化により、国内で作られていた衣料品は海外からの輸入になり、より生産者との関わりが遠くなっていく。
どこかの国の誰かが低賃金で作った服を着て、捨てたものは埋立地の土中で腐っていくのを意識している人は少ない……そんな内容でした。

食料品に関しては世界的に意識が高くなってきていると思いますが、衣料品のファスト化にここまで弊害があるとは思いませんでした。
驚きだったのは、使用済みの服は埋立地にそのまま埋められているということ。そのため、衣料品の汚染度は他の産業の中でも3位にまで上りつめています。プラスチック製品で土中で分解されないとわかっていながらなぜ燃やさずに埋めるんだろう……。海外のゴミ事情はよくわかりませんでした。

ファスト系のドキュメンタリーは消費者が求めた結果の弊害として紹介されることが多いですが、最大悪は「需要⇒供給」ではなく「供給⇒需要」の流れが出来てしまっているからなんじゃないのかなぁと思います。供給元がコレをこう売りたい!とCMなどをバンバン打って打って打ちまくって消費者に「需要」を作る流れが悪い!
それをどう解決するのか?と言われると、消費者が意識を高く持つ、くらいしか浮かばないのが悲しいところです。

セレブが同じ服を二回着るとコメントで指摘される。
新しい服を着ないやつは「ダサい」という傾向がある。
その消費者心理をマーケティング戦略にとりいれている……。

作中では「プラスチックを着ている」とは言うものの、
ただ、合成繊維をただ否定しているだけではなく、合成繊維の新しい技術なども紹介しています。
また、天然繊維である綿花も生産者に過酷な負担を強いている場合もあるし、生産時に膨大な水分を使う問題もある。

そういった問題を解決できるのはウール。後半はウールがいかに素晴らしい素材か紹介しています。

私も安い合成繊維の服をダメになるまで着るという生活スタイルになってしまっているので、自分が着る服の素材とスタイルを見直そうと思います。
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