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永遠に僕のもののNMのレビュー・感想・評価

永遠に僕のもの(2018年製作の映画)
3.5
紹介文で少年の美しさが強調されていたので『君の名前で僕を呼んで』のような作品かと思ったらあまりストーリーには関係なかった。美少年ではある。相方も。
あの作品より殺伐としていてシュール。ロマンティックを除去した感じ。性、および生物としての人間を綺麗綺麗ではなくしっかり表現している。殺人もあるし食事中には適さない。

主人公は誰とも心から関係を深めない少年。人の命とか尊厳とかが理解できない。自分すらも大事にせず明日どうなるかなど考えない。家族とも友人とも自分のやりたいことと利害が一致する時のみ一緒にいる。
窃盗は得意だが成功したところで達成感はないし失敗しても落胆はない。殺人も軽々に犯すが葛藤もなく、逆に快感もない。
時々にやりと微笑む以外は感情を見せたないし心情の吐露もなく何を考えているか分からない少年。多分深いことは考えていないしあまり感じてもいない。

相棒ラモンもやっぱりちょっと変。家族も変わっている。突然芸能界目指してみたり。
父も変だし、母は普通に見えてもっと変。

後半からはさらに画作りに変化があり面白い。ストーリーも展開。
これまで静かだったがときどき歌や音楽も加わる。

一度だけ突然溢れ出した感情が印象的。いつ死んでもかまわないように見えていた彼だが、いざとなるととっさに逃げ出した。だが逃げたところで自分には何もない。
どうやって生きていこう。何で生きているんだろうな。
とりあえずちょっと踊るか。

美しかったし雰囲気はとても良かったが観終わって正直苦笑。観るものをおちょくっているとも取られかねない。
ただ人には、家庭や学校で孤独だったとか原因がなくとも問題行動を取ることはありうるし、断続的に絶望していてもふいに踊ったり微笑んだりはするという点はリアルを感じた。

昔風のレトロなファッションが目を引く。パンタロン。旧いスポーツカー。色褪せた色彩。
後半はとくに青と赤の対比が美しい。これだけでも観る価値はある作品だった。


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