デンマークで製作されたサスペンス映画。緊急通報指令室の一室だけで終始展開されるワンシチュエーションものです。自分は「十二人の怒れる男」などこういったワンシチュエーションものが好きな傾向にあり、本作もご多分に漏れず自分の中では良作になりました。
主人公であるアスガーは元刑事というだけあり、洞察力と正義感を持った人物であることが冒頭のあらゆる人とのやり取りでわかります。それと同時に何故そんな彼が刑事ではなく、オペレーターをやっているのか。それが一つ目の物語のポイントになっています。
そして、二つ目のポイントが電話越しでしか状況がつかめない誘拐事件です。起こっていることが実際に見れないにも関わらず、吐息や周囲の音から状況を想像させられ、主人公と同様にハラハラとした気持ちでストーリーを追う事が出来ます。相手がどんな人物なのか、何が起きているのか、どんな情報を聞き出すことができるのか…。次々に訪れる電話のコールに、疲弊感と焦燥感が増していくアスガー。そして訪れた絶望には、観客である我々も開いた口がふさがらなくなります。脚本と監督と俳優とがすべてがマッチしていないとできないアンサンブルが生まれています。
総じて主人公の巧みに情報を引き出そうとする技術の高さと焦燥感がこの作品をワンシチュエーションながら盛り上げてくれ、88分ぶっ通しで観ることができる作品です。
おすすめ。