Masato

THE GUILTY/ギルティのMasatoのレビュー・感想・評価

THE GUILTY/ギルティ(2018年製作の映画)
4.3

ファントムフィルムのシークレット試写会はまさかの本作だった。いや二日後に公開するじゃない。なのにシークレットって何事と疑問を受けたが、まさかのイヤホンを使用しての試写会だった。電話での会話のみがイヤホンで流れる仕組みで、非常に没入感たっぷりで最高だった。あらたな映画体験を味あわせてもらった。ありがとうございます。

映画館でも十分に見ることはできるが、最高の環境と没入感を味わいたいのなら、イヤホンを使って鑑賞するのが望ましい。

「Search」に並ぶとして言われることがあるが、まさにその通りな現代ならではのワンシチュエーション映画。ただ、この映画の題材は全くもって新しいものではない。ジョエル・シュマッチャー監督の「フォーンブース」や、ハ・ジョンウ主演の韓国映画「テロ、ライブ」などは、通話のやりとりだけで物語が進む映画として存在する。(オンザハイウェイも)

しかし、二つの映画に共通するのは、犯人とは関係ない人間が巻き込まれる形で物語が進むのに対して、本作は緊急ダイヤルの応対係の人が主人公なので、直接的に関係はないが、ある意味関係がある形で進んでいく。主人公は電話でその場を対処しようとするスキルを持ち合わせているので、脳内で作戦のようなイメージ像を掻き立たせる新たな楽しさがあって面白い。

また、どんな映画よりも、本作は音の使い方に気を遣っていて、その点からもイヤホンでの鑑賞を推奨している。ただ通話しているだけでなく、通話相手の場所から聞こえる僅かな環境音、他人の声なども物語上で非常に重要になってくる。そういった主人公と一体となって体感していくような感覚が非常に面白い。通話のみということにものすごく拘っていて。本当に通話しかない。そこが凄い。

こうしたアトラクション映画として88分間突き抜けるような体験をさせくれるが、ストーリーもなかなか。ワンシチュエーションなので、詳しいことは言えないが、「ギルティ」というタイトルの意味を探りながら見ていると、人間性というものを考えさせられる物語になっていたことが良い。ある意味ヒューマンドラマ。88分という短い尺ながら、うまく計算されて物語の深みを作り出していて素晴らしかった。正直、後半は容赦なくどんよりとする箇所もある。

そして、音から作られる人間の想像というものは限界があるということ。その想像には様々な脆弱性があるという危険性を見に染みて分かったが、本作はそれを利用しているので非常に上手いと思った。

画としてはコールセンターのみの地味な映像だが、主人公の顔だけの演技は迫真を極めており、地味なのに非常にスリリングな映像を見せられた気分になる。ちょっと「大統領の陰謀」のロバートレッドフォードの電話のシーンを思い出した。


ワンシチュエーション好きは確実にオススメ。そうでなくても、作品のクオリティは抜群に良いので誰にでもオススメする。
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