富田健裕

ロケットマンの富田健裕のレビュー・感想・評価

ロケットマン(2019年製作の映画)
4.0
歌であれ、映画であれ、創作物には作り手の人生が集約される。
いつだったかさえも思い出せないほどの過去の一コマでも、向き合い続けて来たトラウマでも、作り手にとっては全てが創作の種で、それは紛うことなく己の手の中にしかない唯一無二の財産だろう。ただ、その唯一無二の種を手に取って芽吹かせようとするには相当な痛みを伴ってしまって、それは幾ら生まれ持った才能が偉大であっても変わらない。
成功して地位と名誉と財産を得たとて、それによって一時道を踏み外したとて、常に向き合っているモノは自分の負なる部分で、表向きには成功という一面しか伝わっていない様も当人からしてみれば忸怩たる思いの筈。
常に自分と向き合って、何かを克服しようとしている人間は強い。

レジー少年が夜の枕元に見たオーケストラの夢想が綺麗だった。
楽器隊が演奏を忘れてレジーのコンダクトに優しい目を向ける。
あそこから始まったんだな。
あそこに向かって飛んで行ったんだな。
富田健裕

富田健裕