垂直落下式サミング

キングダムの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

キングダム(2019年製作の映画)
3.8
佐藤信介監督や大友啓史監督は、損な役回りばかりしていて可哀想だ。一時期は落ちるところまで落ちた日本のエンターテイメント作品を、少しずつではあるけれど、どこかへ出しても恥ずかしくない水準にまで高めようとしてくれている。こんな重責を担わせてほんとうに申し訳ない。10年も遅れをとってスリーハンドレッドを追わせることになるなんて、俺たち観客が奴らを甘やかしたばっかりに…。
るろ剣に関しては、キャラクターに寄り掛かりすぎているわりにドラマパートがつまらなくて続編はみなくていいかなって感じの出来だったが、このキングダムは、個々人の戦闘のほかに軍を動かす立場の人間の駆け引きにも重きをおいている漫画なので、いい塩梅のアクションものにしやすい題材だったと思う。良い筋肉戦記に仕上がっていた。
顔がいい吉沢亮が堪能できる。ほんとうに顔がいい。美形に加えてスタイルもいい。加えて加えて吉沢亮って名前もなんか、いい。字面だけみると古風なシンプルさなんだけど、音の響きがどことなくクール。ちょっと前の二枚目俳優とかと違って、澄まし顔に嫌味がないし、あんまり性格拗れてない感じだし、たぶんさっぱりしたいいやつなんだろうな。お嬢さんがたにモテるだろう。国民の彼氏の称号を欲しいままにしているのではないか。何でもかんでも手に入れやがって。
一昔前は、顔はいいけど他はどうなのよってやつが多かった気がするけど、最近の若手イケメンって芝居も歌もある程度は達者にこなせてしまうからすごいよな。エンタメ業界も不況だし、生半可なやつは生き残れなくなってるんだろう。
吉沢亮の芝居の達者さの一方で、山﨑賢人は歌劇の仰々しさを取り入れた古代中国王朝訛りの日本語を開発し、独自の路線で将へと成長していく青年を見事に演じている。
一番なりきり度が高かったのは、オネエ口調なのに強キャラな大沢たかおの王騎将軍。この調子なら、中華最強を目指す続編を作ってもいいんじゃなかろうか。ドドンドドンドン!汗明!