しゅんまつもと

さよならくちびるのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

さよならくちびる(2019年製作の映画)
3.3
理由なんて後から追いかけてくるもんだ。ハルがレオを誘った理由はその後のふたりがカレーを食べて涙するシーンを見れば想像ができる。なんであのときレオが涙したのかってこともそう。そのあとのふたりを見れば、それは語られなくても想像することができる。全ての行動が理由に基いてなければいけないなんてことはない。そういう説得力と、ゆるやかに変わる3人の位置関係で魅せる序盤にとても惹かれた。

しかしライブハウスの観客や対バンのバンドの描き方は雑というかもはや露悪的と言ってもいい。端的にステレオタイプでダサい。そういう空間を作ってしまうとその中心で鳴る音楽すら安っぽく聞こえてしまう気がする。
物語は北上し戻ってくる、というロードムービーでありながらそこに文字にした詩が重なるというのもなんだかもったいない。例えば、ツアーの終わりに函館から帰る車が蒼に包まれる一種の"終末感"みたいなことが他の場面でも見れたら嬉しかった。