こなつ

ヘイト・ユー・ギブのこなつのレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.0
アメリカで大きな反響を呼んだアルジー・トーマスによるヤングアダルト小説(学園青春ドラマ)「ヘイトユーギブ あなたがくれた憎しみ」(2017年)の映画化。
評価が高いにもかかわらず、インディーズ系映画だった為、日本では劇場未公開作品。最近この映画の存在を知った。「トスカーナの休日」や「Shall We Dance?」の脚本を手掛けたオードリー・ウェルズの遺作となった。

こんなに素晴らしい作品が日本で上映されなかったのはとても残念だと思う。
無実の罪で射殺された友人のために立ち上がった黒人女子高生の奮闘を描いている。

「フッド」と呼ばれるような黒人の集まる低所得者地域であるガーデンハイツは、ギャングが徘徊しドラッグが蔓延する黒人街。そこに家族と暮らすスター(アマンドラ・ステンバーグ)は、白人が多く通っている進学校の女子高生。学校では本当の自分を隠し白人の友達とも上手く付き合っている。学校と家、それぞれの世界で自分を変えて生活している。ある日、幼なじみの黒人の男友達が抵抗した訳ではないのに、自分の目の前で警官に射殺された。警察はその警官の行為を正当化し、事件が事実と異なった報道をされていく。衝撃を受けたスターは亡き友人のために社会の矛盾に立ち向かおうとするのだが、、、、

学園青春ドラマとは思えないような「人種差別」の問題がしっかりと描かれていて、警察や司法による理不尽な対応、人命軽視の描写は正にアメリカ社会が抱える大きな闇が浮き彫りになっていて興味深かった。両親からはしっかり躾られ、恵まれた環境、深い愛情で育てられていたスター。そんな彼女が、友情や恋愛、親との関係性に悩む普通の高校生でありながら、黒人としてのアイデンティティ、人種的な葛藤を常に抱え、自分のルーツと向き合っている姿が胸を打つ。

アマンドラ・ステンバーグの魅力的で輝きを放つ演技に終始釘付けになる。父親役のラッセル・ホーンズビーや母親役のレジーナ・ホールが温かく愛情深い両親を好演。

とても見応えのある良作だった。
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