ホリ

海獣の子供のホリのレビュー・感想・評価

海獣の子供(2018年製作の映画)
3.8
映画の題材自体はとにかく壮大という印象。頭の中を整理しながら、このレビューもまとめているが、まず忘れていけないのは、この作品は『私の夏休みが始まった』や『私の夏休みが終わった』という一人称視点で作品が展開されていく。
簡単にまとめると、
主人公である彼女の『夏休み日記』と言ってもいいだろう。
彼女の台詞でもあった『私の夏休み終わっちゃったな〜』という、本来ならば、部活で部員の子に怪我をさせてしまい、楽しい夏休みは終了という目前…
平凡な夏休みを過ごすはずが、海(ウミ)と空(ソラ)の登場で、見た目も中身もちっぽけな彼女は大きな成長を遂げる一夏となる。

ファーストシーンから絵作りが非常に巧みで、『目を開けてごらん』という一言で、海に住む生き物たちが目の前で大量に泳いでいる映像が浮かび上がる。
その後、その様子を見つめる彼女の表情アップに繋がり、この2カットだけでは一見、水族館で生き物を見つめるだけの空間には見えない。
まるで、彼女が海の中に存在し、海の生き物たちと触れ合っているかのように見せている。

このファーストシーンの情報源で、
彼女の終わりかけた夏が、海と繋がることで充実していくという説得力に繋がる。

題材自体は全てを理解したとはとても言えないが、【生命の誕生・その瞬間の力強さ美しさ】を描いていると思う。

彼女と海のやり取りで、
『見つけて欲しいから、光っているんだ』という台詞が非常に印象的で、海に落ちた隕石のカケラも人の形では無くなった海も空も、彼女の目に留まるように海の中で光り続ける。

この映画を見ていると、
『生きていること』=『光り続ける』
と感じ取れる部分があり、どこかに自分の存在という光を認知してもらえることが、生きるという意味なのだと思った。

最終的に、海と空は『本当に存在したのか』と疑いたくなる程、海の中で綺麗に姿を消してしまう。

しかし、主人公である彼女が、
彼らと触れ合った上でのラストシーン。
新しい『生命』誕生の瞬間に向き合わせたということは、確実に彼女の一夏に『海』と『空』は存在したに違いない。
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