なっこ

マチネの終わりにのなっこのレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
3.0
ずっと見たかった作品。ようやく見れた。

原作小説は珍しく2回読んでる。
友人がこのタイトルを冠したクラシックギターコンサートのチケットを贈ってくれたときに、課題図書のように復習したから。

何よりもまず啓一郎の小説世界を映像化してくれてありがとう。映画にならなければ、この素晴らしいギター音楽を聴くことも架空の映画作品のパンフレットを見ることも出来なかったのだから。それは読者と著者の想像の世界にしかなかったもの、それにかたちを与えてくれたことに感謝。

啓一郎作品はそれほど読んでないけれど、出てくる女の人が好き。この作品のヒロインもとても素敵だった。作品の設定としてはふたりの出会いは30代の後半だったはず。主演のふたりは設定よりもひとまわり以上年齢が上。それでも彼らが起用されるのは、やはりお客をつかめる俳優陣が限られてるから、という気もしてる。小説ではもっとふたりの人生の背景に深く入り込んだ描写が多い。映画では特にヒロインの仕事や親子関係、内面の描写が浅く、主人公ほど深く描けていないとは思うけれど、原作は国際的な問題も扱っているので、このくらいの軽さで描くのも仕方ない気がしてる。福山さんはとても情熱的に主人公を演じていて、魅力的だった。この役柄を深く愛しているのが伝わってきてすごく感動した。対してヒロインは、少し背景に引いてしまった感じ。主人公と彼を支える女たち、という構図になってしまったように思う。後に妻となるマネジャーの存在感が増してしまってヒロインの魅力が少し減ってしまった感じ。話の流れ上仕方なかったのかもしれないけれど。

原作も運命的な愛の話として魅力的でかつ読み易いので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい作品。啓一郎の作品は、『ある男』の映画化と『空白を満たしなさい』のNHKドラマ化が決まっていて映像化作品も増えていきそう。海外翻訳も進んでいるみたいだし、この作品は、メロドラマな面もあるからぜひ海外勢にも映像化に挑んで欲しいんだけど。どこかリメイクしてくれないかな。
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