三田紀房の漫画『アルキメデスの大戦』の実写映画。原作の内、戦艦大和の話だけで完結しており、良くまとまっている。但し、いくつかの登場人物に至っては性格が大きく変更されており、原作とは異なる様相が窺える。私はこの変更を良く思っている。特に主人公・櫂直だ。戦艦の予算を算出するという地味かつ真面目な内容であるため、今作のような変人としての側面を強く出した主人公の方が映えるだろう。
役者で印象に残っているのは、やはり主役の菅田将暉と、それから田中正二郎を演じる柄本佑だ。菅田に至っては、今作オリジナルである櫂の性格を自然に演じていた。適当な言葉が思い当たらないが、脱力しきった印象を得た。芝居というよりも、その人物が実在するといった感じだ。また、柄本に至っては、いくつかの場面で非常に複雑かつ早口での台詞がある。彼の発音は非常に聞き取りやすく、そこも見どころ、もとい聞きどころと言える。そういえば、大里清(原作では異なる名だが)を演じる笑福亭鶴瓶は原作のものとそっくりだった。
先述の通り、内容は地味ではあるが、戦闘場面が冒頭に登場する。そこでは非常に精巧に表現された戦艦大和が窺え、素晴らしい出来だった。ここでは戦争の実態を強く反映しており、ここにのみグロテスクな表現がされている。とはいえ、一瞬であるためそれほど憂慮する必要はない。戦争を表現をするうえで避けてはならない点であるとも言えよう。
そういえば、櫂が船に乗り込む場面は横浜港を映しているが、彼が乗る船には「氷川丸」と描かれており、どちらも実在している。これが VFX を使用したものなのか、実物を利用したものなのかはわからない。