一人旅

ふたりの女王 メアリーとエリザベスの一人旅のレビュー・感想・評価

4.0
ジョーシー・ルーク監督作。

イギリスの歴史家:ジョン・ガイによる2004年発表の「Queen of Scots:The True Life of Mary Stuart(スコットランドの女王:メアリー・スチュアートの真実の生涯)」の映画化で、イングランドの王位継承権を巡ってイングランド女王:エリザベス1世と対立したスコットランド女王:メアリー・スチュアート(1542-1587)の波乱の生涯を描いた“16世紀英国宮廷歴史ドラマ”の力作となっています。

生後6日でスコットランドの王位を継承、16歳でフランス王妃となったものの、18歳の時に夫であるフランソワ2世が病死したため母国スコットランドに帰国したメアリー・スチュアートが、隣国イングランドの王位継承権を巡って時のイングランド女王:エリザベス1世と対立を深めていく姿を描いた歴史映画で、シアーシャ・ローナン&マーゴット・ロビーの若手女優二人がメアリーとエリザベスを力演しています。

英国史上有名な「メアリーvsエリザベス」を題材とした歴史劇ですが、ケイト・ブランシェット主演『エリザベス』(98)、『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(07)を始め過去に幾度も映画化されている“超有名人”エリザベス1世以上に、王位継承権を巡って彼女と対峙したスコットランド女王:メアリー・スチュアートを中心に描いていく作劇で、今現在もスコットランド人にとって人気の高い女王の一人であるメアリーの波乱に満ちた生涯を、独身を貫き跡取りを産むことなくこの世を去った従姉にして最大のライバル:エリザベス1世の生き様と対比的に描いています。男を愛し男に翻弄されながら悲劇の人生を歩んだメアリーと、生涯独身を貫き“男として”生き抜いたエリザベスという二人の女王の王位継承を巡る対立を「カトリックvsプロテスタント」の宗派対立を背景に交え描きながら、同時に、一人の女が国を統治する困難と孤独に対する両者の共感と相互理解についても触れられた、“女性映画”としての意味合いを多分に含んだ作品となっています。

蛇足)
英国王室はどの時代を切り取っても映画化できそうな恵まれた歴史の宝庫でもあります。エリザベス1世の実母:アン・ブーリンについては『1000日のアン』(69)や『ブーリン家の姉妹』(08)、ステュアート朝最後の君主であるアン女王については『女王陛下のお気に入り』(18)、ハノーヴァー朝・ジョージ3世の乱心については『英国万歳!』(94)、現エリザベス2世の父親:ジョージ6世については『英国王のスピーチ』(10)等、世界史の教材にもなる映画が沢山作られています。
一人旅

一人旅