金宮さん

岬の兄妹の金宮さんのレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
4.0
過激描写だってたまには必要なときがある。

どん底で悲惨な状況をリアリティをもって描くことをとにかく徹底。しかも、ラストの締め方は、結局なにも解決していないことを示唆している。

過剰な映像の畳みかけは、センセーショナルな話題つくりなのでは?という批判的な意見もわからなくはないが、個人的にはその印象はない。

なぜなら「否が応でも記憶に残ってしまう」それこそが今作がもつ大きな役割だと思うから。

鑑賞する誰もが思うように、彼らの生活を支えうるセーフティーネットは日本には存在するのだから、その使い方を知ることができていないだけ。だとすると解決の近道は誰かが教えてあげること。本人にでも役所にでもいい、それだけでよければ自分にもできるかもしれない。

道原兄妹のような苦境にいる人たちが、実際どのくらいいるのかはわからない。だからこそ、ひょっとしたら身近にそうなってしまう可能性がある人はいるのかもしれない。今作の細部に宿るリアリティは、誰かを救うかもしれない「気づき」への感受性を高めてくれる。

衝撃的な映像の連続は、その感覚をできるだけ継続させるためのものだと思っている。「パーキングに停車しているトラック」「窓に貼られた新聞紙や段ボール」などはもちろん、マクドナルドやチョコパイですら記憶喚起の装置となっている。

極めつけはラスト和田さんの表情。「あぁ、またやるの?」清濁が合わさってどっちにも見える。その苦笑いから受けたハンマーで殴られたような衝撃を、忘れることなどできそうもない。
金宮さん

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