ノラネコの呑んで観るシネマ

蟲のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

(2018年製作の映画)
4.5
巨匠シュヴァンクマイエルの待望の新作。
これ大好物だ。
巷では「カメラを止めるな!」が人気の様だが、構造のユニークさでは83歳のおじいちゃんも全く負けてない。
チャペック兄弟の厭世的な戯曲、「虫の生活」を上演しようとしている劇団員たちが主人公。
フンコロガシやコオロギが登場する第二幕のリハーサル風景を映画化したメタ構造なんだが、シュヴァンクマイエル自身がそれをを撮影しているメイキングがシームレスで挟まれる。
さらに劇中人物の妄想がアニメーションで描かれ、彼らを演じる俳優が自分の見た夢を語り出す。
いわばメタのメタのメタ、どこまでが創作でどこからが現実なのか全然わからない。
この作家らしく徹底的に現象に拘った作品で、まさに映画のシュルレアリスム。
本人もテーマが何か分からないと言ってたから、素直な心で観て感じたことで良いんじゃないか。
おそらく、戯曲の「虫の生活」にラストが二つあることから発想したんだろうけど、よくこんな変な映画(褒め言葉)を作ったな。
すっとぼけたラストまで、シュヴァンクマイエル節は健在。
しかし虫の話だけに、ホンモノの茶色いアイツが無数に出てくるので、苦手な人には拷問に等しいかもしれん(;´д`)