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テル・ミー・ライズのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

テル・ミー・ライズ(1968年製作の映画)
4.5
イギリスの名舞台演出家ピーター・ブルック監督による、セミドキュメンタリーとロックを合わせた実験的ベトナム反戦ドラマ。どちらのパートも鋭く問題をえぐっている。ナパーム弾で被害を受けた少女の写真に衝撃をうけたカップルが、イギリスはベトナム戦争をどうとらえているのか、ロンドンの人々にインタビューするドラマ。

最初、まったくのドキュメンタリーだと信じ、取材される側のさまざまな意見に感動していたが、滑舌の良さと揺るぎない物言いに気づき、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの俳優たちの自然体の演技だとわかり、舌を巻いた。それほどに真をついた作品。一部、活動家など実在の人物が自分の言葉で語っているので、セミドキュメンタリーとなるのかな。

カンヌでは当時の政治情勢から上映中止に、ヴェネチアではブニュエル賞受賞、イギリス・アメリカで限定公開された後、原版が紛失。複製ネガが発見され2012年に復元された。

セリフとはいえ、(どんな)戦争についても多様な立場の多様な考えがあり、それを多面的に紹介しつつ、そこを論破し、反戦を訴える手腕が素晴らしかった。

「正義の戦争は一つもないのだからベトナム戦争に正義がないという理由で反対するのはおかしい」

「人類は戦争によって進歩してきた。その人類の歴史を否定できない」

という政治家(演じる俳優)の詭弁もあり、現在に通じる戦争を肯定する(理解できなかった)論を知ることができたのもよかった。

しかし、間接的に知ることと、現実的に向き合うこととは違う。ラスト開いた扉🚪に現れるものは何か。見たくないのか、見て見ぬふりするのか、存在を否定するのか。
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