mitakosama

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのmitakosamaのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

片渕須直の妥協無き仕事っぷりを見るに、やはり高畑勲の後継者と言っていいのでは。従来あった“この世界の片隅に”を、3年かけ30分の追加シーンを足すことで、同じ話なのに別のアプローチが可能になる、という全例が無い試みを成功させてしまった。

大きくは、前作では予算の都合でカットしたリンさんとのカラミを復活させた。それだけなのに何故にこうも印象が変わるのか???

それはリンさんのセリフ「この世界にそうそう居場所はのうなりゃせんよ」がキーだと思う。
遊女として売られた子供でも生き抜いたリンさんだからこその言葉。もちろん、すずさんに生きる場所を示唆する言葉だ。
これは逆に言うと、そんなリンさんの生き場そのものを奪ってしまうのが戦争の現実だということ。

だからこそリンさんの死の意味は重い。
前作では晴美ちゃんの死に比重が置かれたので、ラストのシラミの子を救うシーンは晴美ちゃんへの供養と捉えることができる。

だが今作では、さらにリンさん(座敷童の子)の供養の意味合いも大きくなっている。
シラミの子を救うことは二重にすずさんを救っていることが、今作によりより明確になったと言える。


さらにすずさんの“女”の部分が如実に出たのもオドロキ!
すずさんが、周作にとって自分はリンさんの代用品ではないかと訝しむシーン。これを炭団に例えているのも凄いが…
↓以下ネタバレ↓
これを濡れ場に合わせて表現しているんですよ!!!

マジ?まさかの色っぽいワンシーンだが、このカットが実に素晴らしい!
事前に知らされていなかったカットだけにかなり衝撃的でした。

驚きは絶えないが、とりあえず近日中にもう一回見に行きます。
mitakosama

mitakosama