Punisher田中

mid90s ミッドナインティーズのPunisher田中のレビュー・感想・評価

4.0
舞台は1990年代半ばのLA。
シングルマザーの母、兄と暮らす13歳の少年・スティーヴィーは、兄の暴力に怯えながらも反撃する機会を窺って日々を過ごしていた。
そんなある日、街のスケートボードショップでスケートボードを楽しむ少し歳の離れたグループと出会ったスティーヴィーは、彼らの自由さに憧れて仲間に入ろうとするが...?

何なんだ...この85分は...
単に思春期真っ盛りでストリートカルチャーに憧れを抱く少年を撮っているだけの筈なのに、そこにはしっかりとしたドラマがあって、彼を取り巻くキャラクター達の説明がきちんと為されなくとも、それぞれの輪郭を鮮明に映し出されているのが凄すぎる。
考えていないようで、細かい所まで拘り抜いた自然さはまさに90年代のシーンをそのまま切り取ったもののように感じられ、映画のはずなのにドキュメンタリーを見ているよう。

少年から青年へ、青年から大人への痛々しく怠惰な通過儀礼を進めていき、年齢不相応な大人の階段を次第に上がっていくスティーヴィーの姿は、僕達の忘れていた、もしくは体験したことのない爽やかな青春を体験させてくれる。
成長と堕落の境界線をスケートボードで道路に繰り出すように行ったり来たりする今作は85分とは思えない質量をもっているので、気になっている方は是非見てみては。
音楽・スケートシーン、画面の色彩構成もクールで至福だった...!