【90年代に帰りたい】
ジョナ・ヒルによる半自伝的な内容の初監督作品。
〈あらすじ〉
1990年代半ばのロサンゼルス。シングルマザーの母、兄と暮らす13歳の少年スティーヴィーは、力の強い兄に怯えながらもいつか見返そうとしていた。そんなある日、街のスケートボードショップで年上の少年らと出会った彼は、彼らの自由奔放さに憧れて仲間に入れてもらおうとする…。
〈所感〉
こういう感じ、中学生くらいを通過した男なら誰しもわかると思う。社会の規範からズレたことや悪しきことをするのは格好良いという価値観。タバコ吸ったり酒飲んだり、仲間とつるんでグダグダやったり。単なるイキがりといえばそうなんだが、今思えばその頃特有の輝きというのものってあるよね。自分はどちらかと言えば親や先生の言うことに大体従ってきたので、彼らが羨ましくて仕方ない。くだらないこと、一つのことに熱を注げるのって13~15歳くらいまでだったりする。これより若いと不自由すぎるし、これより上だと自由すぎる。「不自由下の自由」と言うべきか。親や教師からの抑圧に耐えながらも、自由の窓から外を覗き、自分なりの世界・社会への反抗というコンストラクションを始める最適な時期。スティーヴィーは結果的に良くない方向に進んでしまったのかもしれないが、彼の成長にはレイ、ファックシット、フォースグレイド、ルーベンという悪い仲間達が決定的に不可欠なものだったのだろう。彼らにはあの一件の後もいつまでもスケートボード片手にダベっててほしい。ラストのフォースグレイドの自作フィルムが最高だった。このちょっとピンぼけした感じのポップカルチャーの宝庫、群像劇。これぞ90年代半ば…。とか言いながら私は90年代半ばに生まれた人間なので、当時の空気感は実際わからない。なのに、ずっと90年代に戻りたくて憧れて堪らなくなっている。ヒップホップ中心の音楽のセンスが良い。大衆性もありながらA24らしいユニークでアート性も高い傑作です。
