リプリー

太陽は動かないのリプリーのレビュー・感想・評価

太陽は動かない(2020年製作の映画)
3.5
吉田修一さんによる原作シリーズはすべて読了していて、映画はそれなりに楽しみにしていた。

香港のシーンはスカイフォールっぽい!とか、その手前のエレベーターのやり取りはMIっぽいとかまあ、ハリウッドスパイ映画っぽいところを探しだすとキリがないし、まあ見ていて楽しくはある。
アクションもなかなかの見応え。
だけど、原作読んだ立場としてはあの傑作「森は知っている」をドラマに厚みをもたせる回想シーンとして使ったのが非常にもったいないな、と。
そしてこの映画、回想シーンが多く、その度に緊張感が途切れる。
先述した香港のアクションシーンも対比の意味が「物語を効率よく語るため」の作り手都合で、作劇上の意味はあんまりないように感じる。ストーリーの語り口が途切れ途切れで、セリフも所々キザ、というかクサ過ぎる箇所チラホラあって、その度に冷める。
そんなこんなで、あんまり褒められた出来じゃないかな、と。
薄口B級アクションとしてみれば悪くはないんだけど。
アバンタイトルのド派手アクション、後半露骨に「定期連絡を入れさせない作戦」になっていてちょっと笑えたし。

あと、予告編の心臓起爆装置推しは本当にどうかと思う。
あれは原作でもそうだが、スパイもの設定における一つのキャッチーさでしかないのに、タイムリミットサスペンス風の予告にすることになんのメリットがあったのか…。
ダサいと思わないのかね…。

本作を見てもし原作に興味が湧いたなら「森は知っている」をぜひ!