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サンセットのmeltdownkoのレビュー・感想・評価

サンセット(2018年製作の映画)
4.0
前作「サウルの息子」に比べれば、向こうは人をシステマチックに処分する狂気のシステムを下敷きにしていた分フックは強く、今作は取っ付きづらい印象がさらに強まっている。両者とも主人公にべったりと張り付くカメラであったけれど、「サウルの息子」のカメラが閉塞を強く意識させるものであったのに対し、今作ではイリスの意識にトレースするように視点が動き、あるいは周囲が見えなくなるような描写も、それがイリスの主観を切り抜いているということを意識させる作りになっている。この映画における物語の混乱は、イリス本人の混乱とパラレルなのではないか。前作と併せて考えてみると、ネメシュ・ラースローはおそらく、世界とは解釈であると告げているのではないか。世界は事実の積み重ねによって成立するのではなく、解釈こそが世界を構成しているのだ、と。
サウルにとっての息子はイリスにとっての兄であろう。それは彼らにとって寄って立つ大地であり、それを失った瞬間に彼らの生は全く違う意味を持つようになる。その果ての全く違った景色こそが刮目すべき対象として差し出されているように私には見えるのだ。
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