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無限ファンデーションのeyeのレビュー・感想・評価

無限ファンデーション(2018年製作の映画)
3.7
"無限ファンデーション" (2018)

冒頭からいきなり違う話になるが…

自分はけっこう石川寛監督好きで
これまで以下の作品を観てきた

・tokyo.sora (01)
・好きだ、(05)
・きみのゆびさき (06) ※レビュー未
・ペタルダンス (13) ※レビュー未

上記作品に全て共通するのは

"大体のあらすじがあるだけで
あとはその場のやりとりで芝居を行う"

すなわち "いま/ここ" の即興

映画なのに大まかなプロットだけがあって
その流れの中で役者の演技力がためされる

ある意味での "アナログ手法" に感銘受けてる

石川監督以外(邦画)で
"即興"で映画を作り上げてる作品を
知らなかったが

今回劇場で発見してしまった…

それが この "無限ファンデーション" /18

この映画を観てる最中に色んな作品への
オマージュがあるな と勝手に感じていた

"リリィシュシュのすべて" /01

→ 青々と茂る田園風景の描き

"少女邂逅" /18
"志乃ちゃんは自分の名前が言えない"/18

→ 未来-羽良の2人の関係性の変化と自転車
→ 少女邂逅と同じロケ地の高崎市を使用

"桐島、部活やめるってよ" /12
"台風クラブ" /85

→ 誰かに依存して鬱屈している関係性

"リバーズエッジ" /15

→ 過去-現在のインタビューの挟み込み

いずれにしても 青春の悶々とした思い出を
苦悩や葛藤を含めて表現されてる

即興となると 「そのとき何を思うか」という
"感情表現" がキーポイントになっている

なので この映画は出演者が 泣きまくり

「いやー、よくそんなに泣けるなー」

って思うくらい鼻水垂らしながら泣きまくる

この間シネマロサで鑑賞した
"松永天馬殺人事件"/18 もそうだったが

この作品もMOOSIC LAB作品なので
音楽の引き立て方や引っ張っていく力が凄い

役者の持つ活気と活力を発揮してトーンを
統制しつつ、冷静に熱い 感じが出ていた

鬼気迫って がむしゃらな演技もあれば
喜びを感じさせるような演技もある

無限ファンデーションの構成台本を読むと
ホントにびっくりするくらい隙間だらけで

「これを演じてたのか、、、」

あのシーンは
「たった一行だけだった」
と瞬間瞬間の連続が思い起こされた

撃たれて続けても絶望せず敗北せず
優しさと希望を失わず眩しさを
そのまま感じることができる

フィクションながら苦さや甘さを
追体験させてくれる青春ゾンビ系の映画

ただ「ここってどうなんだろか?」って
本来丁寧に心情を描くはずのシーンを

スッとばすような はたまた何があったかは
分からないシーンもある

父役の渋川清彦氏について触れられないとか
男子演劇部員の存在感の皆無さとか
小雨さんの死の理由に入り込めないとか

正直いくつもあるが 突っ走る衝動感はある

登場人物達が切実な思いを語る部室のシーンや衣装の汚れを落とすシーンについては

もはや即興演出とは思えない
緊迫感と緊張感を垣間見た

この作品はそれぞれ演者の役割が
思春期の終わりかけを表現する作品でもあり

お互いの化学反応の中で
見事な融合を果たしてる

後半 主人公の未来が主演のはずが
羽良を主体とする方向性のおかげで
ダブル主人公になってるのも即興演出の妙か

絞り出すセリフの最中に右往左往する
その間(ま)の取り方

そこから展開される気持ちや空気感を
大切にするこの作品を観れて良かったと思う

※8/27上映後に脚本家の足立紳さんと大崎監督の貴重なトークの中で、作品をベタ褒めするわけでもなく、始終Critical thinkingのようなやりとりを繰り広げていたのが印象的だった。作品は魚喃作品のblue(01) のような雰囲気を作り出したかったとの話も貴重だった。
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