やや

永遠の門 ゴッホの見た未来のややのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞前にゴッホについての漫画を読んで、ある程度予習していて良かった。なにも知らずに観たらこの映画だけではわかりにくかったかもしれない。

良くも悪くも雰囲気映画で、ゴッホについての詳細を知るというよりも、人生や風景がゴッホにはどう見えていたのかを体験・共有する作品だと思った。

その点からも、カメラワークは独特。
セリフがなく、静かな音楽とともにゴッホと風景や、登場人物の顔のアップを見せるだけのシーンもとても多い。(神父との会話は少し退屈でもあった。笑)
ハンディカメラのようなブレも多く、不安定すぎて酔いそうになる場面も…
ゴッホの視点では画面半分にもやがかかる演出。その時間は決して少なくなく、とても見づらい。
けれどそれがゴッホの視界や心情を表現していて、この映画はゴッホの世界を共有するということにとても重きが置かれていると感じる。
黄色い麦穂、木漏れ日、眩しい陽射し、沈む太陽、永遠に見える平らな風景。ゴッホがどう感じて筆を動かしたのか、気持ちを共有できるような気がしてくる。

昨今、描いた絵をSNSにアップしてイイネがつかないだけで病む人も多いのに、おそろしいほどの枚数の絵を描きあげて、全く評価をされないのは画家にとって想像を絶する辛さだと思う。
『人生は種まきだ』なんて…収穫の時に自分がいなくても意味はあるのか。遺体が真ん中にあるのに、誰1人としてゴッホに興味をもたず、周りの絵画だけが売れていくなんて悲しくはないのだろうか、画家として評価されるのであれば。

印象派の代表に挙げられるくらい我々にとっては馴染み深い有名なゴッホ。
この寂しい人生がなければ彼の絵は生まれなかったかもしれない。
時代が違えば評価されていたのか?どちらが画家である彼にとって幸せだったのか?
考えても仕方のないことだけれど、思いを馳せずにはいられない映画だった。
やや

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