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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のtoukoのレビュー・感想・評価

5.0
私の人生を象徴する1本。というより私のこれからの人生がこうあって欲しいと心から思えた大切な作品。

今まで映画を観ても本を読んでも中途半端な共感しかしたことがなかった。登場人物の一部分を見て自分と重ねて涙したり悔しくなったり嬉しくなったりしたことは何度もあるけれど、その人物の全てに共感したことは1度もなかった。

映画や本が好きな友人と話しているとみんな自分の人生の1本というような特別な想いを抱いている作品を何かしら持っていて、その作品について語る彼らの眼差しは本当に熱くて眩しくて。

でも私にはそういう1本がなかったからただただ羨ましく思っていた。

だから映画館に行くと行きはいつも「今日観る作品がこの嫉妬心に終止符を打ってくれたら幸せだな〜」なんて考えながらいつもワクワクで胸がいっぱいになる。

コロナ禍で映画館から遠い生活が続いて家でもあまり観なくなってしまって、映画に対する情熱がなくなりつつあった状況で、映画館生活再開一発目に選んだ今作。
正直に言って全く期待していなかった。原作も読んだことがないし特に思い入れもない。いつものワクワクも今回は久しぶりに映画館に行けるという気持ちに引っ張られて存在を成していなかったように思う。

ポップコーンの匂い。心地いいのか悪いのかなんとも微妙な座席。大きなスクリーン。優しくかつ強く劇場を包み込む音響。映画が始まる前から満たされていて、もうそれだけでよかった。今から観る作品がどれだけつまらなくても今日はいい一日だなって確信があった。

そんな中でまさかの出会い。全く予期していなかったこのタイミングで出会った人生を変えることになるだろう1本。

ストーリー・オブ・マイライフ。

私にとって本当にストーリーオブマイライフだった。

物語の主軸はメグ、ジョー、ベス、エイミーの4姉妹の人生。決して裕福とはいえないながらもお互いを称えあい高め合い愛し合う4人の人生模様を軽やかに描いている。
ストーリーに派手さはない。結婚がどうとか仕事がどうとか生きているうちに1度は考えるであろう事について思い悩む4姉妹のお話。とても普遍的だがこの普遍さゆえに多くの人々がこの四姉妹に共感し、共に喜び悩み涙を流す。そしてまた私も例外なく彼女らに共感し、映画館で涙を流し続けた1人である。

私が特に感情移入、を通り越して≒の存在として自己を重ねたのがジョーだ。

女性にとって結婚が一番の幸せという価値観が主流だった時代(原作が世に出てから150年以上経った今でもその価値観が残っている事実が大変悔しい)に、「絶対結婚しない」「自分で働いて稼いで生きていく」という指標を立てて世間の波に逆らいながら自分の道を突き進んでいくジョー。

「これだ。私が目指しているものは。目指している場所は。ジョーは私自身だ。」

ジョーの価値観と生き方を享受した私はもはやジョーが自分にしか見えなった。彼女が泣く度に私も泣いて彼女が悩むたびに私も悩んで。気づいたらジョーの全てに自分を重ねて観ていた。

私は今まで結婚したいと思ったこともしようと思ったことも無い。自分で生きていけるのであれば無理に結婚する必要もないと思っている。自分のしたい仕事をして稼いで1人で幸せを享受して。それが私にとっての理想だけどそれが正解なのか、いつも悩んでた。だって孤独だから。

劇中でジョーが、我が道を突っ走りつつ「とても寂しい」と打ち明けるシーンがある。刺さりすぎて涙が止まらなかった。私が目指した先にはやはり孤独がある。避けては通れないんだ。そう思ってとてつもなく辛くなった。

映画がもしここで終わっていたら、あるいは原作通りに終わっていたら、私は絶望と共に映画館をあとにしていただろう。

けれどグレタガーウィグは私にちゃんと希望を与えてくれた。ラストで私を絶望から助けてくれた。

このまま突っ走っていいんだ。私の選択はきっと間違っていないんだって心から思えてまた泣いてしまった。

私がジョーに強く共感したポイントはもう1つある。
彼女がひとりよがりの幸せを追求しているのではなく、あくまでも家族のために結婚せずお金を稼いでみんなを助けたい、家族みんなで幸せになりたいと願っているところだ。
善人ぶる訳じゃないが私も大金を稼いだら家族にあれを買ってあげたい、友達にこんなことをしてあげたいと考える時がある。

自分の幸せだけのために生きて誰も幸せにできない人生になればそれこそ孤独だ。ジョーは孤独かもしれないけれど、それでも彼女の人生はきっと幸せなはずだ。家族を愛して自分を愛して皆と幸せを享受して。

やっぱり私はこのまま突っ走りたい。ジョーになりたい。ジョーの人生が私の人生であって欲しい。

幸せとはなにか。
自分の人生を自分で決められること。自分のやりたいことをやれること。自分の大切な人を幸せに出来ること。

孤独でも幸せなんだよ、私はな。
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