『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』とはよく言ったもんだ。秀逸な邦題ではなかろうか。
この映画のテーマの1つは、「経済」である。
ー女性は1人では稼いでいけない。
ー結婚は自分の経済のためにするもの。
マーチ伯母さんもエイミーに言っていたし、ローリーからのプロポーズの返答でジョンも言っていた。
思えば、過去作は大体クリスマスのシーンから始まっていたのに、この映画はジョンが自作を出版社に売り込む場面から始まる。視点が異なるのだ。
若草物語のオリジナルは、女性であるジョンが自分の夢を追いかけるという話なのに、ベア教授と結婚するという、あるいみ矛盾した結末が着地点。本作は、この矛盾を解きほぐし、『若草物語』に隠されていた女性像を明確にした意欲作であり傑作である。
そのため大きな脚色として、誰もがあっと驚くクライマックスには正直脱帽した。映画的な快感である。
その他、貧困と戦うメグ、ジョンの対比として描かれるエイミーもそれぞれの人生がある。この映画のエイミーは、現実と本心の間を揺れ動く様を表現しており、大きな役割を果たす。
その他、脚色としては、性の描き方である。
ジョンとローリー。男女の名前が逆のペアは、シアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメの『レディバード』コンビで仲の良さを見せつけつつ、非常に中性的な2人で、服なんかを交換してたりする。いわゆる男女の関係とは異なる。それが2人が結ばれなかった理由である。
現実のオルコットを意識しつつ、ラディカルになりすぎず、現代的な視点で性を描く。
(実はこのへんのバランス感覚がこの映画を傑作にしている気もしている)
どれも映画としてのベースのクオリティが保証されて成立する話。例えば窓をよけながらダンスするシーン。その見せ方たるや圧巻であったし、過去と現在の時制を行き来する語り方も秀逸。昔は、1階に下りたらベスがいたのに・・・という対比で表現されたシーンは見事。
やはり、ベースのストーリが頭に入っていてこそ面白く感じる作品である。傑作であることは間違いない。