ノラネコの呑んで観るシネマ

楽園のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

楽園(2019年製作の映画)
4.4
田舎残酷物語。
楽園ちゅうか、地獄?
とあるY字路で起こった少女失踪事件を起点に、12年後の現在で杉咲花、綾野剛、佐藤浩市の運命が動き出す。
序盤、登場人物たちの行動が常軌を逸するくらい愚かで強引なことに戸惑うが、最後まで観ると、「なるほどこれは狙いか」と分かる。
吉田修一の原作は未読だが、わりと記憶に新しい現実に起こった二つの事件をアレンジし、繋ぎ合わせている。
映画は「罪」「罰」「人間」の三章構成で、最初に罪が犯され、次に曖昧な罰が下される。
しかしそもそも罪を作り出したのは誰なのか?が最後に問われるという構造。
だから犯人が誰か?とかの謎解きは、一応あるけど全く重要ではない。
本作で描かれるのは罪と罰の無限スパイラルに陥ってしまった時の人間の心であり、瀬々敬久監督の持ち味が発揮されて見応え充分。
しかし、ここに描かれる日本の田舎は、ある意味ホラーより恐ろしい。
モデルになった実際の事件の報道を読んだ時も思ったが、なんで田舎の年寄りは「人が増えて欲しい」とか「若者に来て欲しい」とか言いながら、逆に人を遠ざけるようなことをするのだろう。
もちろん全部が全部そうじゃないだろうけど、こういう田舎も実際珍しくはない。
本作では、ある程度以上の年齢の登場人物は本当に救いようがなく、あえて「老害」という言葉を意識させるように作ってるが、それも一定のリアルがあるからだろう。
実質的な主人公を杉咲花にしているのも、作品の指向する先を示唆する。
果たして人間は楽園に生きられるのだろうか。
ブログ記事:
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