KOTONE

ぼけますから、よろしくお願いします。のKOTONEのレビュー・感想・評価

4.0
娘さんの乳がんの治療に対する不安に
寄り添ったのは
間違いなくあのお母さんであって
きっとこれまでもお母さんはお母さんの役割を
やってきたのだとあの場面で感じた。
認知症になっても母は母なのだ。

実はわたしは仕事柄
認知症を持つ方と関わる機会が多く
当人だけではなく家族とも交流する機会がある。
しかしわたしが見てきたのは
他人に良い顔をしているベストな状態の当人と
日々の疲労疲弊や
当人の前では口に出せない気持ちを
笑顔で隠す家族の姿であった。
理解しているつもりでいたが、この作品を観て
わたしはこの人や家族のほんの一部しか
わかっていないことが明らかになった。

作品を見終えてからも
全員が大変だっただろうなと感じたが
わたしが目にしたものはこれも一部で
あれは毎日やってくる生活であるのだ。

どうしても一部しか理解できない
自分の無力さに
その日はなかなか身体が動かなかった。

一部を除き
認知症に対する特効薬は見つかっていない。
ましてや原因も明らかになっていない。
薬もなければ防ぎようのないもはや運命とでも
言えるこの疾病と付き合っていくには
多くの方の理解が必要となる。
この作品はその理解への第一歩にもなり
認知症を抱える人々を
救うものとなったと感じる。

認知症と診断されても周囲に隠すことなく
サポートがあることで不安になることもなく
自分の人生に満足して最後を迎えられる世界に
はやくなりますように。
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