YAJ

グリーンブックのYAJのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

 薄々ヤな予感があり後回しにしていた作品。地元に来たし、時間もあったので鑑賞。今、こういうネタで撮ればアメリカではウケるんで作ってみました~といった作品か。

 好きなロード・ムービー系だ。2人の会話が良いとの噂も聞こえてきてた(アカデミー脚本賞だし)。でも、粗野な男と生真面目な男の丁々発止なら『ミッドナイト・ラン』(1988)のデ・ニーロとC・グローディンのやり取りのほうがよほど気が利いている(昔は良かった、を言い出すと嫌われるんでしょうね・苦笑)。

 物語として万人ウケする、最大公約数なところを狙ったとすれば、あながち的は外していない。人種差別を扱い、流行りの「事実に基づく」作品、笑いと音楽、旬な役者(マハーシャ・アリ)の起用とソツはない。
 ただ、アカデミー賞で作品賞なんて獲ったものだから、ハードルが上がってしまったとしたら、逆にお気の毒というところかもしれない。 

 そもそもヴィゴ・モーテンセンが個人的にあまり好きな役者ではない。の割に、近年も『はじまりへの旅』(2017)を観ちゃったりしてるんだけど、ヤなイメージが払拭されない。が! そのヤな感じが、この映画ではハマってたのが唯一の収穫だったか。

 ひとつ疑問が。1960年代のアメ車って、もうパワーウィンドウってあったの??? 
 車中でフライドチキンをほうばるシーンがある。セレブな黒人ドク役のアリが「食べた骨はどうする?」と運転中のヴィゴに訊くと、得々と「こうするのさ」とワンタッチで窓をウィーンと下げて、ポイっと骨を路肩に放り投げる。
技術的には存在してたようだけど(1930年代~)、一介のミュージシャンがツアーに出る時にプロモーターが手配する車に標準装備されているもの?

 手づかみでチキンを食べたことがなく躊躇するアリに対し、手慣れた感を出すために、ヴィゴにさっと捨てさせてみたというところだろうが、ちょいと気になった。



(ネタバレ、含む)



 あまり書くことないなあ。
 鑑賞前後に映画に因んだ食事をするのが2019年の我が家のお愉しみ。この映画は、なんと言っても、アメリカ南部を旅するお話で、ケンタッキー州を通過するときに、上記のように嬉々としてフライドチキンを食べるシーンがあったので、短絡的ではあるが、久しぶりにKFCに行ってみた。ほんとにいつ以来だろうかという印象。

 美味しいんだよね、悪くない。思っていた通りの期待の味だし。でも、あいかわらず安くはないなあ。ファーストフードも一時の価格競争の負のスパイラルからは脱却しているけど、低価格路線を頑張って維持しているよね。サーブも早さも売りにしてたり、お得なセットを色々打ち出したりと(ま、主にマックだけど)。
 そんな他のファーストフード店と較べて、昔から、ケンタには、それほどの努力の跡が感じられないし、鶏肉がずいぶん安くなった昨今でも、そこそこお高い印象が残る(あくまで、当社比)。

 あぁ、この映画も、KFCっぽいのかな。
 思っていた通りの結末だし、悪くないけど味に深みはない。名の知れた役者使ってるから、それなりにお高い(製作費)。料理人(製作スタッフ)は、たいして腕を振るってないよね、カーネル・サンダーの秘伝のレシピを踏襲している(事実に基づいている)だけで。
でも、安心の味だし、これが万人ウケする(今の時代にウケる)味なんだよね、きっと。でも次はまた何かの機会があればでいい。わざわざご指名で食べにはいかないかな、KFCは。

 ん?どっちのことを言ってんだか分からなくなったけど(笑)、とにかく物理的に腹は満たされたけど、食事をした満足感は薄いというファーストフードあるあるな作品。

 小ネタや伏線の回収はそこそこやったけど、そもそも大切なテーマは描き切れていたの?
 ドン・シャーリーが「NYなら3倍稼げる」のに、何故、差別の残る南部へツアーへ行くのか?「演奏することにより、差別の現実を変えたいからだ」とバンドメンバーが語るシーンはあったが、彼は「変える」ことができたのか?
 時代として、それは無理だったとしても、ドン・シャーリーとして得たものはあったのか? 何か意地を見せたのか? 最後の演奏を、差別を受けたことでキャンセルすることが彼の筋の通し方だったのか?

 じゃぁ、なぜトラブルを避け「自分を差別するようなところには泊まらない」とグリーンブックに掲載されているモーテルを宿にする?(その差別には立ち向かうことはせず)

「Green Book」(黒人用旅行手引書)のタイトルすら、活かせてないダメダメっぷりなのに、作品賞?脚本賞?
 アカデミー賞そのものに私自身、信頼を置いてはいないとはいえ、なんだかなあだったな。

 分かってて食べに行ったのならケンタも十分美味しいし満足だけど、高級レストランで腕利きシェフの絶品料理を御馳走するよ、と連れていかれた場所がKFC。そんなギャップか。
 各賞受賞が仇になってる?!
YAJ

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