このレビューはネタバレを含みます
【人種や文化や言葉遣いを飛び越えるロードムービー】
「黒人と車で旅する」ということしか知らないで鑑賞。
●良かったところ。
〇主人公が完全にクリーンな正義の味方ではなく、野卑で暴力的でデタラメな男なところ。
トニーには共感できる面/できない面がある。
そこが人間臭くて良い!
〇長旅が終わり、旅の友と別れたあとの何とも言えない虚脱感がリアルすぎる!
楽しいはずの家族友人とのクリスマスパーティーに身が入らないトニー。
シャーリーも、「城」に帰ってきて孤独を感じる。
「寂しい時は自分から手紙を書かなきゃ」のマインドが、ちゃんとシャーリーに響いていたからこそ、シャーリーはクリスマスパーティーに参加できた。
〇黒人差別が悪意や嫌悪感・拒否感によるものだけでなく、「当たり前化」していた点も描いているところ。
レストランで食事を拒んだ支配人(?)は「土地のルールだ、理解してくれ」と、自分の悪気のなさを主張していた。
差別は見えないもの・見えなくなるもの……というのが描かれていた!
〇黒人でも白人でもなく男でもない私は誰なんだ……のセリフが印象的。
●イマイチだったところ。
〇実在の人物名を使ってるところ。
不勉強ゆえシャーリーもトニー・リップも知らなかったのだが、どこまで事実に基づいているのかが怪しい……。
物語としてあまりにも綺麗に収まりすぎているので、事実としてそのまま飲み込むのは危険かも。
★ロードムービーとして、友情モノとして、黒人差別問題を扱った作品として、非常に優れていた。
人種だけでなく、音楽や食べ物の好み、言葉遣い、性的指向など様々な「違い」に触れている。
メッセージ性や史実を主題に据えながらも、笑えるところや感動できるところがちゃんとあるので、かなり取っ付きやすい作品だと思った!