賢太郎

グリーンブックの賢太郎のレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.5
2019年劇場鑑賞作品5作目。
[本年度のアカデミー賞作品賞]を受賞した作品を遅ればせながら鑑賞して参りました。

系統として『最強のふたり』とか大好きだったので多分"合う"タイプの作品だろうなと思っていましたが、やっぱり良かった。レビューを見た感じだと「もう一捻りあっても良いんじゃないか?」みたいな意見もあったのですが、僕としてはこれくらいの方がリアルに当時の黒人差別(人種差別)の社会的背景が描かれていたように思います。『それでも夜は明ける』『ムーンライト』が作品賞を受賞したり、『ブラックパンサー』が大健闘したり(こちらはマーベル作品ですが黒人のヒーローが主役の作品という立ち位置です)と、21世紀のこの今だからこそ過去を振り返ることは必要なのだと改めて考えさせられます。

教養のあるシャーリーはトニーからチキンの食べ方やその骨を車の窓から投げ捨てたり、今まで知らなかった世界を学び、トニーはシャーリーから詩のような手紙の書き方や、"暴力"を使わずに相手に勝つ方法を学びます。2人とも真逆の性質を持ち合わせているようで、まるで昔からの幼馴染のようにピッタリと息が合うのが面白い。

個人的にはやはり雨の降りしきるあのシーンでシャーリーが"本音"をぶちまけた瞬間の演技が鳥肌でした。実は酒が無いとやっていられないような、精神的にも常に我慢し続けていたシャーリーのその糸が一瞬だけ切れるその刹那。そして最後の公演での決断に繋がっていくわけですから、やはり2人があのやり取り以降真の意味で理解し合えるようになった気もしますね。

[グリーンブック]という本はある意味で黒人差別の象徴のような1冊。そんな本を片手にこの2人が巡ったという史実が本当に意味のあることなんだろうな、とエンドロールの本人たちの写真を眺めながら余韻に浸ってしまいました。
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