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すばらしき世界のeyeのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2018年製作の映画)
3.9
"すばらしき世界" (2018)

PFFアワード2018
審査員特別賞・映画ファン賞
ダブル受賞作品

"すばらしき世界"を観れば
賞を取ったその理由がはっきり分かる

ストーリーの中で

役者自身が持つエネルギー
石井監督が表現したいこと

両方がシンクロして シンプルに力強い
特に主人公 優演じる 團悠哉 氏の迫力

内側から湧き上がる怒りや悲しみなど
顔面もさることながら全身で表現されている

この映画は
石井監督の実体験がベースにあって
家族の崩壊が描かれる

母子家庭の中で 優は不登校

優は底無し沼に浮かぶボートで時を過ごす

落ちたら再び浮かび上がれないところに
優は漂って浮いている

唯一 優を気にかける女子先輩もいるが
優自身は先輩の想いとは別の行動を取る

結果として 女子先輩も傷つけてしまい
優自身も深く傷ついてしまう

優と母親は母親自身のパート代と
別れた父親の養育費で生計を立てている

優はそんな生活に翻弄され
心の曇天と葛藤・衝動・暴力が入り混じる

衝動・暴力は時に母親へ向けられ
時に家の中を荒らすことで表現される

共依存関係の母子は父親の介入により
2人の世界を分け隔てられてしまう

その結果

優は再婚する父親の元で暮らすことになる

そこに至るまで行き場のない苦しみや寂しさ
優自身の弱さ 悲しみ 切なさが壮大に表現される

中華料理で親子3人が話すシーン

注文したチャーハンの炒める音が
優の固まった表情に対し 異様に大きく

"心のざわつき"

を表しているかのように耳に残る

人生の転機に差し掛かったときに

「人はこういう表情になるんだな」

とフィクション世界から感じられる

ラストシーンでは 別れの儀式として
母親に髪の毛を切ってもらうシーンがある

共依存関係を断ち切ることを垣間見る

優は涙が溢れて前が見れなくなり
その咽び泣く姿は肩の力が完全に抜けている

張り詰めた緊張感の中に映るシーンには
悲哀感や悲壮感を超えた壮絶さを映す

いち人間の真摯な姿を目の当たりにする

自分を作品の中で表現するということは
過去の自分を見つめ 客観的に捉えていく

泥くさかったり
青くさかったり
恥ずかしかったり

昇華させるために必要な映画だったんだな
と観終わったあとに強く感じた

それを衝動感溢れる形で見せてくれて
観て側は清々しい気持ちになれる

チカラ強いエネルギーをもっている作品
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