francois708

漂うがごとくのfrancois708のレビュー・感想・評価

漂うがごとく(2009年製作の映画)
4.0
ヴェトナムの映画は初めて。「インドシナ」での熱演が忘れがたいリン・ダン・ファンが目当てだったのだが、全体としてとてもいい映画だった。
たとえば蠟燭一本をともしただけの、薄明りのシーン、その窓から差す光、そういう映像の美しさが印象に残る。
音楽も控えめな使い方なのに印象的。ズエンのネグリジェが切り裂かれるシーンの、ピアノの低音部の目立つ音楽が好き。
ことばもすくなくて、とぎれとぎれのことばのあいだにある沈黙の方が雄弁なくらい。
わたしには結婚式よりも葬式が似合うとつぶやいて、結婚の意思を示さないカムも、結婚はしたものの、なんだか結婚という枠にうまくなじめないでいるズエンも、ともにある種の虚無感のようなものを抱えていて、その二人が髪や足を洗いあう場面がなまめかしい。
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