又野克明

ジョーカーの又野克明のネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

他のレビュアーさんたちが、長文でとにかく燃えているのが、この映画なので、個人的に言えることはあるだろうか?と感じ、甚だ私的に論じにくい作品であることはあるのかもしれない。

簡単に言うが、とにかくすごい映画だった。迫力、メリハリのある撮り方から、俳優の演技力、魅力が十分に発揮されていて、間違いなく面白い部類に入る映画だった。

人は幾度となく度重なる不幸に、どう対応しきれるのか、と言うのが、私のこの映画のテーマだ。主人公アーサーは極端に純粋な人格で、度重なる不幸の果てに、何度かの殺人を犯してしまった。とにかく、これだけの不幸が重なった経験が自分になかったのはなぜか?を考えると、やはり「誰かが助けてくれるわけがないので、自分で自分を助ける力を信じているし、自分が助けられる範囲の分岐点での選択、判断、その力も信じている。あと、他者から心の傷を受けた時での時間・自然治癒力も信じている」と言うことになる。

そうである。つまり、全部信じているに過ぎないのだ。それゆえにアーサーに共感し、「あ~あ、ダメかぁ?」と言う思いに駆られるのだ。他の方のレビューでも、やはり「アーサーを他人ごととは思えない」的な感想が多いのも納得がいく。なぜ、納得がいくのかと言うと、つまりはアーサーみたいな体験が起こりうる可能性は十分にあるし、実際にアーサーのような人間がいることを、我々人間はうすうす感じているからである。

ということはどういうことかと言うと、この映画はアーサーみたいな人間はこの世界のどこかに必ずいる、それも複数である、と言うことからこの映画は考え始めなければならないとなるのだ。そして、それは「問題」と言うことではないのであって、それはなぜ、起きるのか?と言うことでもないんだな。

正直に言うとそれは、アーサー(ジョーカー)が正義ではないだろうかということであり、アーサー(ジョーカー)は本当に悪いのか?罪であるのか?と言う疑問を持つこと、そのことが大切な映画なんだ、と個人的に思いました、と言う次第です。
又野克明

又野克明