ばびろーん

ジョーカーのばびろーんのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.6
タクシードライバーに影響を受けている、と公言された作品だけど個人的に思い出したのはファイトクラブでした。俺がびっくりしたのはこんなに悲劇的で暴力的な作品がここまでテレビCM等で大々的に宣伝され、もてはやされ、そしてアカデミー賞確実、というキャッチコピーや単純にアメコミ映画としても、かつてのバッドマンの名作としてちょっと映画知ってれば絶対聞いことあるであろうダークナイトとしてのブラント力も手伝って、俺が思ってる以上、というか想像の何倍もの人がこの作品を見るため劇場に足を運んでいるのだ。だからこそこれに対して、今まで日本でプチ流行してきた数々の映画以上に賛否両論飛び交っているんだろうな。有名になってるから友達と見に来たけど全く良さがわからない、アメコミだと思ってきたのになんてものを見させるんだ、という意見を身近なとこで見たのも一度や二度ではない。アメコミ映画、話題の洋画、としての仮面をかぶって見に来た人にファイトクラブやタクシードライバーを見せる映画、それがジョーカーです。つまり映画としての評価ってよりこの今起きてる現象の方がすごく興味深いわけですよ。だってある程度の映画好きとかじゃなきゃ、タクシードライバーもファイトクラブも一生見ないような人がこれで見ちゃうわけですよ。でこれをきっかけに将来深い映画好きや、数年後にクリエイティブなものに影響を与えるかもしれない。今の時代だからこそ、かつてのファイトクラブ以上にカルト的な映画として後世に伝えられていく名作になるんじゃないかなぁ。2010年代最後の狂気、みたいにさ。

最後の暴動シーンはもう涙をこらえながら、泣きそうになりながら俺自身ああいうフラストレーションをぶっ放すような時代のどん詰まりが生んだ終焉、衝動の塊が大好きなので。もう見ていて、嬉しくてニヤニヤが止まらなかった。泣きながら笑いながら見ていた。映画館で見れて良かったです。

あと、海外ではこれがきっかけに何か事件が起きるかもということが危惧されて映画館に警官が導入されたらしく笑っちゃうが、わからなくもない。そもそもタクシードライバーの真のテーマって「トラビスはどこにでもいるぞ」てとこだったと思うんだよね。近いものはあると思う。俺自身、惨めなアーサーに共感しうる部分はあったけど、よく考えると狂っていく過程も彼の特殊すぎる環境や家庭事情も絶妙に現実離れしていて、本当にそうか?て気もしてきた。大事なのはアーサーに重ねて考えることではなくて、ああいう人物が生まれてしまい、ああいう行動に至った経緯や、あのゴッサムシティの時代背景を今重ねることによって、リンクする部分をどうキャッチするか、なんだろうな。