このレビューはネタバレを含みます
今ではあまりに多くの人がジョーカーのファンで、彼がカリスマ性を持ち合わせた悪であると信じている。たしかにそうだ。
でもこの映画で描かれているのは悪の頂点に立つジョーカーではなくて、底辺で人としての最低限の生活を送っていたアーサーという中年男性。
彼がどんなバックグラウンドで、どうやってあの悪のピエロに成ったのかという伝記みたいな映画に思えた。
彼の半生にハッピーなシーンはないけれど、彼にとっては喜劇で、最高のジョークのネタに過ぎなかったのかもしれない。ある人にとって彼はただの殺人者で、精神異常者で、底辺で這いつくばる人間に見える。しかし視点を変えれば、彼は人の心の奥底にある純粋な悪を体現した非現実的なヒーローであり、社会に対して堪えきれない不満を持つものたちのリーダーなのだ。
悲しいけど、ジョーカーになるべくしてなった男の喜劇。
観れば観るほどジョーカーという存在にハマっていく。