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インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~のPAOのレビュー・感想・評価

4.0
ショーン・アンダース監督は家族をテーマにしたコメディが本当好きだね。
でも私もそんな監督の作った家族コメディが大好きだ。
言うならばかなりセンシティブな内容だと思うし一歩間違えればモラル的に最低な映画とバッシングを受ける可能性もある。
でも本作は養子についての軽率な考えと、深い愛と笑いが良いバランスで調和されている。
3人の子供を養子にした体験をもつ監督ならでは。
子供がいないけどどうしても子供が欲しいと望むパートナーは沢山いて「親になりたい」「子供が欲しい」と望む事になんら問題はない。
人として夢や希望や理想を抱くことは正常な事だし、養子によって得られる幸せや充足感はそのパートナーの生きがいになるんだから周りがとやかく言えるものではない。
しかし一方で、養子が今の生活に空いた穴を補填する存在なのだという事実を肯定するものでもある。
養子を招く事でパートナーふたりの生活は今よりもっと「理想的」になり幸せな生活になるはずだった。でも、実際はそんなにうまい話ではなかった。
子供達は懐かないし常に反抗的で生活は荒れに荒れて心がどんどん疲弊する夫婦が「まだ正式な養子じゃないから施設に戻そうか」と話すシーンがある。
自分達が理想とした幸せなファミリー像じゃないからといって手放すなんて倫理的におかしいとか、生まれた子供を捨てた親と同じではないかとか、思う人もいるだろう。
芯をつく嫌なリアリズムをはじめ「家族とは」「夫婦になるとは」「親になるとは」ということを本気で考えさせられた。
けどあまり重たくならずにコメディでもありつつ、でもちゃんと強いメッセージ性も発信する。
本当に計算され尽くしたような映画だった。
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