ヨッシー

十二人の死にたい子どもたちのヨッシーのレビュー・感想・評価

1.2
『勝手に◯んでください』

冲方丁の同名小説を実写映画化。

廃病院に集められた自殺を願う12人の若者達。しかし、そこに謎の13人目の死体を発見した事で事態は思わぬ方向へと向かう。

監督は『20世紀少年』『人魚の眠る家』などの堤幸彦。
出演は杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、橋本環奈など。

11月に『人魚の眠る家』が出たばかりの堤幸彦監督の新作が早くもきました。
堤監督は基本的に前科が多すぎてダメ映画監督扱いされている人なんだけど、前作の『人魚の眠る家』が普通に良かったこともあって、もしかしたら堤監督は成長してるのかな?と思って期待していた本作。
しかし、残念ながら今回は堤監督の成長を伺えるような出来ではなかった。
どころか、堤監督作品の中でも上位にくるレベルの酷い出来。

話の内容は、生きる意味を失ったり、死ぬ事で何かを成そうとする12人の若者達(タイトルでは子どもたちと言ってるけど、全く子どもには見えない)が自殺のために集まり、なんやかんやあって再び生きる意味を見つける物語なんだろうけど、そもそも各キャラクターの死ぬ動機自体が全く共感できない上に、最終的に生きる意味を取り戻す理由も納得も納得できない。

例えば、2番の死にたい理由はイジメが原因らしいけど、それを本人のセリフで説明するだけで、具体的にどんなイジメを受けていたのかを全く見せてくれないから、全然共感できない。
10番は嫌いな母親が自分に生命保険をかけていて、それを渡さないようにするために自殺するらしいけど、彼が母親との関係を具体的には教えてくれないからそこまでやばい状況には感じられない。

このように死にたい理由を簡単にセリフで説明するだけで、彼らが自ら死を願うほどに追い詰められていると観客も感じられるような見せ方を全くしてない。

そんな状態で、自殺を実行するかどうかをグダグダと討論する姿を見せられても何にも面白くない。
そもそもこれから死ぬくせにやたらと細かい事を気にしてるのもどうかと思う。
完璧に自殺として扱って欲しいならメッセージを残しておくなりいくらでも方法はあるだろ。

おそらく彼らの討論だけでは話が作れないから、謎の13人目の男の正体を探るミステリー要素を入れてきてはいるけど、これが恐ろしく低レベルで、いざ様々な謎が明かされても「だから何?」としか言えない。
トリックにもだいぶ無理がありご都合的だし、話を進めるテンポもよくない。

最終的には彼らは生きる意味を見つけて自殺を満場一致で辞める事になるんだけど、誰一人として自殺を願うほど追い詰められていた状況を何一つとして解決してないのに、全員が希望に満ちたような顔で終わってもなんの感動もない。
とにかく全てが薄っぺらい。

役者陣もかなり豪華な顔ぶれなのに、演技で良かったところは一つもない。
橋本環奈は公開直前まで隠されていたんだけど、そこまでした割には作中で大した役割を持ったキャラではない。

原作は読んでないけど、おそらくこれは原作がすでに酷い気がする。
でも、まだ演出次第では彼らの死ぬ動機に多少は共感できるようにできたと思う。それを完全に投げて全てをセリフで説明するだけで済ませた時点で監督のやっつけ仕事っぷりが露呈してる。

ということで、久々に良いところ一つもなしの超駄作だった。
上映中ずっと「つまんねぇこと話してないでさっさと◯ね」と思った作品は初めて。
『人魚の眠る家』で堤監督は少しは成長したと思ったが完全に勘違いだった。
今年のぶっちぎりのワースト候補です💢
ヨッシー

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