確率的映画鑑賞者

プライベート・ウォーの確率的映画鑑賞者のレビュー・感想・評価

プライベート・ウォー(2018年製作の映画)
3.0
今、そこで起きている、悲惨な戦場の現場を伝える戦場記者の伝記的な作品。物語は、メリー・コルヴィンが戦地で片目を失うことから始まり、最後の戦地までに訪問した戦場での取材が描写されている。また、その合間合間で、PTSDに悩む描写やプライベートの変化なども描かれていた。基本的には、戦地⇒帰還後のロンドンの生活という繰り返しであり、最期のシリアでの取材に向かうという流れ。

正直な感想としては、伝記ものであることもあり、極端な脚色もなく、戦地から日常という繰り返しのためか、ラストまで大きな盛り上がりには欠けていたと思う。事実、途中まで若干退屈に感じてしまった。一方で、最期のシリアにおける戦場の話は、命をかけて戦場で起きた真実と向き合い、それを伝える記者としての生き様や矜持を見事に描き切っていた。主演のロザムンド・パイクの演技も良かったし、変にVFXを多用しないリアルな戦争描写も物語が現実であることを伝えるのに一役を担っていたと感じている。

自分自身、日本という平和な国で生まれ、この映画でメリー・コルヴィンが訪れた戦地も知ってはいるものの、どこか対岸の火事であった。そのような自分にとって、彼女のような戦場記者が伝える真実はどこか現実味がなく、日々の暮らしの中で、One of themのニュースでしかなかった。そんな自分にとって、彼女ら戦場記者が命をとして伝えた真実の重みを考えるきっかけになる作品であるとともに、最後のメッセージは本当に重いものであったと感じた。そういうことに気づかせてくれたという意味で、本映画はスコア以上に心に残る作品であった。