確率的映画鑑賞者

フォードvsフェラーリの確率的映画鑑賞者のレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
3.5
男の友情モノのストーリーとしては、至って普通のサクセス・ストーリー。クリスチャン・ベイルとマット・デイモンの演技は凄くよかったけど、良作ではあるが傑作ではないという印象。

クリスチャン・ベイルのヴァイスからの落差に驚き。まず、めっちゃ痩せていた。一匹狼的な企業の嫌いそうだけどヒーローってこういう男だよなぁって姿を熱演している。マット・デイモンはマット・デイモンで、大企業フォードからの圧力を受けつつも、勝利に向かってチームを運営しなければならない、時には熱い中間管理職的な役がはまっていた。

悪かった点としては、所々前提知識が要求されていることが多いにも関わらず、Wikipediaなどを参照してしまえば完全にネタバレになってしまうところだと思う。例えば、シェルビーがいる自動車工場が小さすぎて、まさかあれがシェルビー・アメリカンという自動車メーカーとは夢にも思わなかった。私の理解力が低いのもあるが、てっきり町工場の自動車整備工のシェルビーがフォードに引き抜かれ、フォード社員になったものとばかり思っていた。前提知識がいるのに、見たらネタバレっていうのは扱いに困る作品だなぁという感想である。車に毛糸を結び付けるシーンとかも、たまたま「東京国際映画祭」で事前の解説があって助かったけど、なければは?ってなっていたはずである。
ストーリーで、無駄に親子愛や夫婦愛を押し付けてきているところが個人的にはハマらなかった。そのシチュエーションには、普通子供や嫁はいないだろうというところにまで、だいたい現われてくる。そのせいで、友情ストーリーというテーマがブレてしまっているように思われた。ケンには家族があるのに、シェルビーには家族がいないというのも、どうにもこの親子愛・夫婦愛的展開に乗れなかった要因でもある。

以上のように、車の知識が前提となったりテーマがブレたりというのもあったが、とにかく男の友情・そして彼らの成功に向かって走る姿を見て、心の中に熱を得られる、そんな作品だった。