安堵零馬山

パリ、嘘つきな恋の安堵零馬山のレビュー・感想・評価

パリ、嘘つきな恋(2018年製作の映画)
2.0
コメディだが無理に笑わせようとしないところに好感を持った。

それは主人公のちょっとした行動ミスに思わず笑ってしまうと云うもので、クドいくらいに繰り返し、さあ笑えと強いるタイプの映画とは違う。もちろん自然であれば、品良く繰り返しことはこの映画にもある。
例えば主人公のオフィイスに車椅子の彼女が訪ねてくる場面。秘書とのインターフォンでの度重なるやりとりと、急に訪ねられ、慌てて身障者の振りをする件だ。それは単なる繰り返しではなく重層化されており、かなり高度な演出になっていた。

フランク・デュボスクは主役と監督を兼ねた才人のようで、コメディアンらしく現場でのアドリブを重視した撮り方をしたのだろう。最後のおまけ映像は本編に入れられなかった珠玉の笑い。

主人公の友人が医師であることで、かなり伏線が張りやすくなっており、展開にも役だっている。なかなか考えられたストーリーである。
プールでのラブシーンも、伏線があるからこそ余計な説明なく描けたと思う。

一番感心したのは身障者の扱い方で、説教臭さがなく、デリケートな問題を感じさせない配慮がある。またコメディだが現実のシビアな部分も忘れてはいない。先進国として福祉に対する吟味の深さが感じられた。

唯一不自然だったのはラストシーン。これはエンディングには劇的なものが欠かせないと云う映画の宿命だからいたしかたない。
安堵零馬山

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