ノットステア

ティム・バートンのコープスブライドのノットステアのレビュー・感想・評価

4.0
○感想
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』より好きです、これ。
骨にこんなにも個性のバリエーションを出せるの凄い。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のジャック、今作のグートネクト長老、他にも、、、

ビクトリアにもエミリーにも共感できる。ビクトリアが可哀そうだと思うとエミリーが邪魔だし、エミリーが可哀そうだと思うとビクトリアが邪魔。

最後の決着も良い。死んだ花嫁も生きている花嫁も花婿もなんか美しい。最後は特に美しい。


ここからネタバレあり。









ビクターの両親もビクトリアの両親も、低い階級や貧乏から抜け出すために子の結婚を進める。

ビクターの両親のセリフ。
上流階級の仲間入り。仮装舞踏会、上品なお付き合い、女王様と頂くケーキ、女王様とのお茶会。今までの生活は忘れたい。
ビクター一家は魚の行商による成金。

ビクトリアの両親のセリフ。
魚売りが!恐ろしい日。世にも悲惨な結婚式。落ちぶれたから挙げる不吉な式。成金に娘を嫁がせる。下品な連中に。最悪。破産した没落貴族。家柄を守って。美人と言えぬ我々の娘が上流階級に戻る“切符”になるなんて。


ビクトリア「ヒルデガード。私、ビクターと愛し合える?」
ビクトリア母「結婚とは関係ありませんよ。お父様と私の間に愛があるとでも?」
ビクトリア「ええ。少しはね」
ビクトリア父・母「まさか!」
ビクトリア母「コルセットをお締め。少しも苦しそうじゃないわ」


ビクター父「今度の獲物は大きい」
ビクター母「あとは釣り上げるだけ」
ビクター「釣り合わない。ビクトリアの相手は貴族では?」
ビクター母「バカね。うちだって貴族に負けてない。ずっと思ってたよ。魚売りは仮の姿と」
ビクター「彼女とは話したこともない」
ビクター母「話したら断られちまう」


ビクターがピアノを弾いているところに、ビクトリアが現れる。
ビクトリア「母に禁じられているの。音楽ははしたないそうよ。“情熱的すぎる”と」
ビクター「一つお聞きしますが…・・・・・・・・」明日結婚する。
ビクトリア「子供のころから夢見ていたの。心から愛し合える人と一生添い遂げたいと。バカみたいね」
ビクター「ええ、本当に。いえ、まさか、そんなことはない」
そこにビクトリア母「何てふしだらなの!2人きりになるなんて」


結婚式のリハーサルで誓いの言葉をうまく言えなかったビクター。墓で誓いの言葉の練習。→エミリーに誓ってしまう。


(ロマンスと情熱と残酷な殺人の悲劇の物語)
お耳を拝借死体の皆さん
耳のあるやつだけでいい
骨も泣かずにいられない
いとしき"死体の花嫁(コープス ブライド)"の物語
みんないつか死ぬけどそう悪いものじゃない
隠れても祈っても最後に残るは骨だけさ
娘の美しさは有名だった
そこへ現れたナゾの男
ハンサムだが一文なし
哀れにも娘は一目ボレ
パパに万台され悩んだ末2人は駆け落ちを計画
みんないつか死ぬけどそう悪いものじゃない
隠れても祈っても最後に残るは骨だけさ
夜遅く落ち合う手はず
娘はこっそり旅支度
着たのはママの花嫁衣装
恋する者に多くは無用
持ち物は少しでいい
家宝の宝石カバンの金
墓地の隣樫の木の下
霧深い夜中3時15分前
娘は来たが男はどこ?
そして?
娘は待った
近づく影は男か?
娘の胸は高鳴った
そして?
そして彼女は真っ暗な闇の中へ…
目覚めた娘はもう死んでいた
宝石は消え恋も消えた
娘は木の下に横たわり真実の愛を待つと誓った
娘を自由にしてくれる人を…
するとこの若者が現れて永遠の愛を誓ったのさ
これが我らの"コープスブライド"物語


一時、生者の世界に戻り、ビクトリアと再会。
ビクター「今朝僕は結婚が恐ろしかった。でも君に会ってそばにいたいと思った。そして結婚式が待ち遠しくなった。」
ビクトリア「ビクター。私も同じ気持ちよ」
キスをしようとしたところにエミリー。
“ホップスコッチ”のシーンはエミリーが怖い。


クロゴケグモ「何が悲しいのさ?」
エミリー(コープスブライド)「彼の言うとおりよ。二人は違いすぎる」
マゴット(エミリーの頭に住む蛆虫)「あいつ頭がおかしいぜ。見てこようか?」
エミリー「彼は彼女のものなの。ミス・生者のね。頬もバラ色で心臓も鼓動してる」
クロゴケグモ「ありふれた女だよ。あんたの方がずっと…。ずっと…。性格がいいじゃないか」
歌が始まる。
マゴット「あの小娘のどこが君より優ってる?」
クロゴケグモ「笑顔の美しさだってかなわない」
エミリー「脈拍は?」
マゴット「そんなもの」
クロゴケグモ「まるで意味ない」
マゴット・クロゴケグモ「彼が君のよさを知りさえすれば…」エミリー溜息。
クロゴケグモ「彼女は指輪も受けてない」
マゴット・クロゴケグモ「ピアノもダンスも歌もダメ。勝負にならない」
エミリー「でも息してる」
マゴット・クロゴケグモ「それが何だ?まるで意味ない。彼が君の魅力を知れば…。私らぐらい知りさえすれば…」
エミリー「ロウソクの炎に触れても痛みなど感じない。体をナイフで切られても同じこと。彼女の心臓は動いてる。私は死んでるの。それでも感じる心の痛み。どうしようもないの。こぼす涙もまだ残ってるみたい」
マゴット「彼女の唯一の取り柄は生きてること」
クロゴケグモ「まるで意味ない。そんなのは一時的なもの。ご臨終が来たらそれまでよ」
マゴット「些細なこと」
クロゴケグモ「まるで意味ない」
マゴット・クロゴケグモ「彼が君の魅力を知れば…。私らぐらい知りさえすれば…」
エミリー「ロウソクの炎に触れても痛みなど感じない。氷の上や太陽の下でも同じこと。それでも感じる心の痛み。脈打つ心臓はないけど感じるこの痛みはどうしようもないの。私は死んでるけどこぼす涙はまだ残ってるみたい」


ビクターとエミリーの誓い
ビクターは死ぬために毒入りのワインを飲もうとする。止めるエミリー
エミリー「できないわ」
ビクター「どうした?」
エミリー「間違ってる。結婚の夢を奪われた私が今度は人の夢を奪おうとしてる。愛してるわ、ビクター。でも人のものよ」
ビクター「ビクトリア」


ビクター対バーキス・ビターン卿
バーキス・ビターン卿によるとどめの一撃をエミリーが受け止める。自分の腹に刺さった剣を抜きバーキス・ビターン卿に向ける。
バーキス・ビターン卿「降参だ。エミリー」
エミリー「出てって」
バーキス・ビターン卿「ああ、出ていくとも」笑う。毒入りワインを持ち「だがその前に乾杯だ。エミリーに介添え人止まりで花嫁になれぬ女。教えてくれ。心臓が止まっても心は痛むのかね?」
マゴット「ブチのめす。止めるな」
グートネクト長老「待て!生者のやり方に従おう。ここは生者の世界だからな」
バーキス・ビターン卿「よくぞ言った」毒が入っていることも知らず、ワインを飲む。扉の前で苦しみだす。
マゴット「もう生者じゃないぜ」
グートネクト長老「そのとおりだ。好きにしろ」
笑いながらゾンビたちがバーキス・ビターン卿のもとへ。扉が開かず逃げられない。ゾンビたちはバーキス・ビターン卿に群がり、扉の向こうへ消えていく。「新入りさん到着!」


静かに立ち去るエミリー
ビクター「待って。僕の誓いは?」
エミリー「もう果たしてくれたわ。自由になれた」
指輪を返す。エミリー「今度はお返しする番よ」
ブーケを投げる。振り返って音もなく笑い、前を向き蝶になって消えるエミリー。綺麗だった。











以下、宮台真司さん引用。

宮台真司の月刊映画時評 第10回(前編)
宮台真司の『愛しのアイリーン』評:「愛」ではなく「愛のようなもの」こそが「本当の愛」であるという逆説に傷つく体験
https://realsound.jp/movie/2018/09/post-253379.html

 所有とは「使っていなくても自分のもの」という観念。この概念が、物だけでなく人にも適用されたものが「結婚」。
元々はどの社会でも結婚は権利配分を決める制度で、愛は無関係だった。
いつの時代にも、結婚は、社会全体を保つのに必要な部分的結束のためになされる「権利配分」。
愛と無関係な、財産と地位獲得のための結婚は、日本でも最近まで珍しくない。身長・学歴・収入で相手を“選ぶ”いまどきの「三高」婚でも、愛の優先順位は低いはず。ならば、あぶれる心配も期待過剰による失望も回避できる「見合い婚」は、とても合理的。
昔はどんな定住社会でも、愛ではないものに「駆り立てられて」結婚した。愛は「結婚以降に」始まった。