蛇らい

ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREYの蛇らいのレビュー・感想・評価

3.8
時代を正しく捕らえて凄まじいほどにクールでイルにアウトプットできている。ヴィラン大活躍の作品でありながら映画的な正しさを貫いたという意味ではド正義。

ハーレイ・クインのファッション、哲学、言葉選び、食べ物などの普段の生活と結びつくような一個人の趣向がヒーロー映画でこれほど細かく描写されるのも珍しい。ネガティブな意味での"女性らしく"という古典的で客観的な概念に対抗し、我がままに生きることがどれだけかわいいことなのか身を持って証明する。

武器をファッションやコスメと同感覚でチョイス、カスタムする姿は現在のティーンにとってとても共感できる演出なのではないかと思う。色とりどりのスモーク、ランチャーの弾には細切れのメッキテープが仕込まれ、発砲時にはガーリーに殺す。

レニー・モントーヤから追われてピンチのときでさえ逃走経路の露店で売られているスパンコールのウェストポーチに目を取られたり、ハーレイが捕まってポケットの中を見てと敵に促し、出てきた物がメイク道具だったり、ラストの戦闘前に武器などを揃えるシーンでハントレスがアイメイクを直していたり、長い髪のブラックキャナリーにハーレイなヘアゴムあげようかと気にかける演出など、感心するくらいにこのメンバーでこの時代にこの映画を撮る意味を描写することを徹底している。

敵もうぇーん、ごめんなさあーい的な女性にへりくだるクサい描写ではなくしっかり殺しにくるし、女の子全員大集合的したりしない。正論をひたすら説いてひれ伏せさせるクラスの強気な学級委員的なアプローチでもない。

性別関係なく、純粋に我が道を貫いた生き方がかっこよくて、かわいくて、楽しいでしょとカメラに向かって悪戯っぽくこちらにはにかむハーレイ・クイン。それだけが答えな映画って素晴らしくないですか。泣けますよね。

この作品がこれから先、似たようテーマで製作される映画にとってひとつのお手本、目安になるような作品だと言える。またひとつ次の展開に映画界を進めた金字塔的な一本。

本作の監督、キャシー・ヤンも『ワンダー・ウーマン』の監督、パティ・ジェンキンスも同じことを言っていたが、私が興行的にも評価的にも失敗したら、次に同じようなプロダクションの作品に女性監督が起用してもらえなくなるというプレッシャーは確かにあったと語っている。

そういった状況が起因して本来の才能を発揮できなかったり、起用される機会が減ることだけは避けなくてはならない。これだけイリーガルでイカした作品を女性監督が撮れることが証明されたことは映画界にとってとても大きい。
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