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ストレイ・ドッグのesのネタバレレビュー・内容・結末

ストレイ・ドッグ(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

負の連鎖を断ち切るためには破壊して無に帰すしかないのか。確かに警察組織という集団からはぐれ、彷徨き嗅ぎ回る姿は野良犬のようだけれど、物語の軸を考えるとやはり原題の方がしっくりくる。

アメリカ文学が描いてきた「父と息子、ホーム」→「父の不在、ホームの喪失」の系譜を継ぐ「母と娘、ホームという概念の消失」的な作品だと思った。
ホームという概念は消え去り父も母も不在。けれど血の繋がらないサポートはある、という所に血族の繋がりよりも関係の繋がりの重視という監督が思うアメリカが向かうべき方向性が感じられる気がする。

セバスチャン・スタンは昔だったらサイラス役だっただろうけど、今はクリス役がしっくりくる。
組織がクリスのオマケとして付けたエリンが2人の人生の主導権を握る(主従関係ではない)ように変化していく関係性がいい。外部から与えられた役割に縛られない柔軟性。クリスの最後の選択で、愛がクリスの信念を曲げた訳ではなくクリスの忠誠は組織ではなく自分自身の信条にあった事が分かるところも良い。それらを全て見るとエリンにとってクリスが人生を狂わせるくらい掛け替えのない存在だった事に信憑性が生まれる。昔はお互いの人生を狂わせる関係というとボニー&クライドのような破滅的関係を思い浮かべたけれど、こういう形もあるのだなと思った。

特殊メイクの違和感で気が散ってしまったのは残念。回想シーンは一人称視点にするとかどうにかできなかったのか。記憶の中にある若き日のニコール・キッドマンを頭の中に思い描きながら見た方が集中できた気がする。でも知らない人にとってはそこまでの違和感もないのか。
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