mt

アド・アストラのmtのネタバレレビュー・内容・結末

アド・アストラ(2019年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

「親子」や「繋がり」のドラマチックさで見ようとした低評価が見受けられるけど、見るべきは多分そこじゃない。自分と父とが対比関係として扱われてることに気付いた瞬間に感想が一気に変わるんだと思う。

火星以降、目的を追うあまり不慮の事態に遭遇して冷静に対処してきたのは優秀な宇宙飛行士だった親子ともに同じこと。父と同じように不本意に命を奪ってしまったのも、基地との連絡を遮断したのも、偶然かもしれないし血がそうさせた運命のイタズラ的な部分もあるかもしれない。
そんな二人がきっかけは違えど同じような道のりで太陽系の端っこまで行き着いて、最後に出した選択が正反対だったのが肝。孤独に銀河の果てを目指した二人がずっと何を見つめていたのかが明示された結果の選択。だからあの別れは心臓をえぐられる気持ちになる。
始終続いてきたブラピの一人語りの中で出てくる新しい気付きや変化にも、改めて自分と父との違いが表れてくるのは清々しくも感じられる。父は父だけど陰やコンプレックスとしての側面が強かったからこそ解放された帰還だと思えた。親子関係が希薄とかそういうものではなくて、亡霊だった父との対峙と決別によって新しい自分に生まれ変わる再生でもあったんだと思う。

孤独の中で生きた親子の対比を通して、どう生を捉えるかっていう哲学に入ってくから、この映画は頭を使うし心が震える。とても濃い物語。

なのだと思う。
mt

mt