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アド・アストラの教授のレビュー・感想・評価

アド・アストラ(2019年製作の映画)
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鑑賞後にグッタリする観客を観て「やりあがったな!」と妙なテンションで、その部分だけ元を取ったな、というような気持ちになれたのだけど、この手の映画って、色んな思考が逡巡してしまう。

何せ。お金と時間を払い「楽しみに」来ているわけで…。いや、別に結果楽しくなくても良いのだが、観ているときは楽しめるか楽しめないか、ということが葛藤を始める。
なるべく目の前で映し出されているものを否応なく読み取ろうとする。

だから画面いっぱいに映し出される「それ」に対して色んなメタファーやら、逆に、素直に観たままを感じてみたりを駆使して、最終的に僕は途中から憤慨してしまった。

あまりにも壮大でお金もかかった、とんでもない話が外枠で展開していて。要は風呂敷を大きく広げた物語に対して、ブラッド・ピット演じるロイのなんともわかりやすい葛藤と、わかりやすい拗らせ方をしたトミー・リー・ジョーンズの、なんともわかりやすいオチと「気付き」のための旅。

ただ、ただ。
お願いだから、それは「家でやってくれるか?」と思ってしまう。
僕はやっぱりこの旅の途中で死んでしまう人たちのことを考えてしまう。
僕は、リヴ・タイラーがアンジェリーナ・ジョリーに見えて仕方なかった。
そして「老い」を迎えるハリウッドのトップ・セレブの実に個人的な孤独感にも、見えた。

正直、もう若い女の子と遊び尽くしただろうし。どう考えてももう「青年」じゃない。歳を重ねただけの仕事をしたいだろうし、なんなら仕事ももういいや、という気持ちなのかもしれない。ただただ、愛する我が家に愛する家族がいる。

それを手にしていないというプラピの独白と言えば、切なくもなるけれど、だからといってやっぱり描写は足りないと思うし、このストーリーだったら、同じ「プランB」製作でも、「ツリー・オブ・ライフ」の方が出来が良かったし。

やっぱり、この手の煩悶は、世界を巻き込むんじゃなくて。家でやって欲しい。
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