ホン・サンス『草の葉』は『夜の浜辺でひとり』に続きホイットマンかと思ったけれど英題は『Grass』で邦題が寄せている。たしかに「声を聞くこと」をテーマにしているだけあってホイットマンではある。「耳ざとい」キム・ミニが会話を最後まで盗み聞きしたあとにツッコミを入れるコント師みたいな脚本。それぞれの会話にツッコミを繰り返しMacBookに書き留めてゆくもいつしかキム・ミニもプレイヤー(非凡な作家)となり、物語に参加することになる。そして詩的なラストには気まずいので目もくれないその奔放さにホイットマン「結局、わたしは」を重ねたくなる。
《結局、わたしは、いまだに子どもみたいなもの、自分の名前が嬉しくて、
何度となく繰り返してみるのだから。
他人の気持ちでそれを聴いてもーーまったく飽きることがない。
あなたの名前だってそうですよーー
名前の響きがいつも同じだなんて、思わないでしょうね?》(飯野友幸訳)