アリスinムビチケ図鑑

ホワイト・クロウ 伝説のダンサーのアリスinムビチケ図鑑のレビュー・感想・評価

4.5
"ただ踊りたかっただけ…。
感じるまま、思うがままに、自由に生きたかっただけ…。"


1961年ソ連からフランスに亡命した1人の才能ある実在したバレエダンサー"ルドルフ・ヌレエフ"の生き様を描いた物語です。


ルドルフ・ヌレエフは 1938年シベリア鉄道の列車の中で産まれ、貧しい家庭に育ち、
偶然手にしたチケットで、オペラ座で公演されたバレエの舞台鑑賞で幼いながらも感銘を受け、
それがきっかけでバレエのレッスンに通い始めます。

17歳でレニングラードの一流バレエ学校に入学します。
遅れを取り戻したいルドルフは、
基礎ばかりの授業に満足出来ず、高等な技術を教えてくれる教授に習いたいと校長に直談判をし編入させて貰います。

優秀な成績で卒業したルドルフは3つの有名なバレエ団から誘われ、キーロフバレエ団に入団しプリンシパルとして活躍をして行きます。

東西冷戦が高まる中(ソ連とヨーロッパ)フランス人ダンサーと友情を深めたり、
社交界や政界に強いコネクションのあるクララと出会い、友情の様で淡い恋の様な信頼関係を築いて行きます。


一見我儘に見えるバレエに対する拘りと自己主張。
決して曲げない強い意思とストイックなまでに追い求める美への探究心と取り組み。

彼のその気質は、
生まれ故郷のソビエトの共産主義の中ではあまりにも異質で異端、
自由の無い日々は、あまりにも窮屈だったのだと思います。

頭を抑えられ才能を燻らせる故郷での生活よりも、
芸術を謳歌し、才能を思うがままに発揮出来るヨーロッパの生活で、
探し求めていた自由の素晴らしさに気付き水を得た魚の様に活き活きとし、
更なる高みを目指すルドルフ。


足しげく通う美術館で、
絵画から得たインスピレーションやイメージを自身に取り込みバレエへと変える感性の鋭さと探究心の深さに感銘を受けます。

絵画を観ている時のその感じ、
自分も絵画鑑賞は好きなので、やけにリアルにイメージできました。

実際にプリンシパルを務めるバレエダンサー"オレグ・イヴェンコ"がルドルフを演じているので、
バレエの舞台も見応えがあり引き込まれます。

逆にバレエダンサーである筈のオレグが、しっかりと役を演じ切っている事の素晴らしさの方に驚かされます。


亡命シーンはヒリヒリ感も伝わって、
フランス警察の毅然とした態度もカッコ良く素晴らしいシーンでした。


『ホワイト・クロウ』(稀なる人物、はぐれ者)と呼ばれたルドルフ・ヌレエフ。

白いカラスが黒いカラスの群れに染まることが無い様に、
人々と群れる事は無いかも知れないけれど、
自由に空を幅広く翼を持ち自分の心に忠実に生きたルドルフにとって、
バレエとは自分自信を形作るもので、人生そのものだったのだと思わせてくれました。

当時の東西の歴史背景も垣間見ることの出来る、芸術的な伝記作で秀作映画だと思うのでおススメです。