ちろる

マチルド、翼を広げのちろるのレビュー・感想・評価

マチルド、翼を広げ(2017年製作の映画)
3.8
優しいけど精神が不安定なママと2人暮らしのマチルドはある日家の中に入ってきた小さなフクロウをママからもらう。
そのフクロウはマチルドに突然話しかけ、やがて心の支えとなっていく・・・
と、孤独な少女の織りなすほのぼのファンタジーなのかなーと思っていたけど、ストーリーは可愛らしくおしゃれな映像とは異なりひたすら重い。
ウェディングドレス失踪事件や、合唱シーン、そして驚愕の引越し事件など、マチルドのママの起こす行動は笑い話を優に超えていてゾッとするのだけど、それが逆に妙にリアリティがある。
これは脚本家のノエミ・ルヴォウスキーの自伝の映像化なのでおそらく本当にあった事なんだろう。うーん辛すぎ。
ただ、たまに挿入される夢の風景が幻想的でとても美しいので、まるで御伽噺みたいな感覚で彼女の物語に向き合うことができるのはこの作品の魅力。

不安定な母親に縛られて離れられない娘の話なのかと思っていたけど、実は娘が母親を手離さなかったのだという事に気づくようになると、やるせない気持ちになった。
限界が来ていたであろう母親の放心した表情もつらいけど、たった9歳で母親がそんな状態になっていると認識するのもさぞかし辛いだろう。
厄介なのは親子共々互いをとても愛しているのがとても伝わるから・・・苦しい。

喋るフクロウは様々なシーンでマチルドを支え、次第に親友になっていくのだけど、果たしてフクロウは話せたのか?そもそも実在したのだろうか?
フクロウの言葉はマチルドの心の声であり、イマジナリーフレンドだったのかなとすごく上品なカタチで見せてくれたセンスある。
苦しみを伴うお話なのに、フクロウが可愛らしくて、微笑ましい場面もたくさんあるので映画としては観心地悪くない作品だった。
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